経済・企業

世界的なインフレは簡単に収まらない 日経平均はどこまで下落するのか=菊池真

日経平均は「高値もみ合い」から「下落」の局面に移る Bloomberg
日経平均は「高値もみ合い」から「下落」の局面に移る Bloomberg

とことん学ぶ2 日本株直撃 設備投資意欲の減退で株安 年末2万1000円に後退=菊池真

 日本株は今後どうなるのか。3月に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切ることは、すでに市場が織り込んでいる。このため、今年1~3月の日経平均株価は2万7000~2万9500円のレンジでもみ合うのではないかと見ている。

 日本株は、米国経済・米株式市場の影響が大きい。その米国のマクロ経済を見ると、消費者物価指数(CPI)は昨年3月以降、高い状態が続いている。今回のインフレは、需要の拡大による「デマンドプル型」のインフレではなく、供給が追いつかないことでモノ不足による「コストプッシュ型」のインフレだ。当初は物価の上昇は一時的と考えられていたが、そうではないと考えられるようになった。

 供給制約の原因は大きく三つある。一つ目は物流の混乱、二つ目は半導体などの部品不足、三つ目はコロナの感染拡大で、需要が大きく増減していることが挙げられる。需要がいままでにないスピードで増減を繰り返している。供給側は在庫の山が積み上がるのが怖いため少なめにしか供給しない。これがインフレ圧力になる。

 米国のCPI(3月分)が4月上旬に発表される。ここでインフレの沈静化の兆しが見えないということになれば、市場はFRBの1回の利上げが0・25%ではなく、0・5%もありうると意識するようになる。

 そうすれば米国の10年国債利回り(長期金利)は2%に到達する。米金利の上昇でドル買いが進み、ドル・円相場は円安に振れ1ドル=120円を突破するだろう。円安・ドル高は企業業績への好影響がかつてほど大きくないことが周知されている。日本では輸入物価の上昇による悪影響を加速させることが注目され、日経平均は2万7000円を割り込み、2万4000~2万7000円のレンジに移行する可能性がある。

循環的にも高値抜けず

 インフレで株安となる日本固有の要因もある。日本は生産者物価指数に相当する企業物価の上昇にもかかわらず、CPIは動いていない。生産段階での原材料価格の上昇によるコスト増を最終価格に転嫁せずに企業が負担しているからだ。日本では2014年、円安・ドル高が進んだことで、食品メーカーなどが相次いで値上げに踏み切った。しかし、値上げによる収入増よりも数量減の影響が上回ってしまった。このため日本企業には恐怖感があって値上げに踏み切れない。これで利益率が圧迫され、業績悪化から株安を招く。

 米国では今年4回の利上げが市場に織り込まれている。政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の将来水準を予想して取引される「FF金利先物」は、22年12月限月が1・0%、23年12月限月が1・75%だ。1回の利上げ幅が0・25%だとすると、22年に4回、23年に3回の利上げを織り込んでいる(図1)。

 FRBの利上げは「需要サイドの減少」、すな…

残り1262文字(全文2462文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事