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中央銀行の資産増えれば物価も上がる 債務過剰下の高金利で大恐慌の過去=市岡繁男

大恐慌時のニューヨークでは1セントでも安いレストランがあると人だかりに
大恐慌時のニューヨークでは1セントでも安いレストランがあると人だかりに

とことん学ぶ3 金利と危機 中銀資産と米物価は連動 巨額債務に高金利で破綻=市岡繁男

 新型コロナウイルス対策で、世界各国の中央銀行は市中から国債などを買い上げて、大量のマネーを供給すると同時に、自らの資産を大きく膨張させた。

 興味深いデータがある。米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、英イングランド銀行(BOE)、日本銀行の主要4国・地域の中銀資産(ドル換算)の総額は、リーマン・ショック後の2009年から右肩上がりで推移。それが20年3月からのコロナ禍で一気に急増した。そうした軌跡と、米消費者物価指数(CPI)が、ほぼ連動しているのだ(図1)。

 つまり世界的なインフレは、本質的に中銀資産の膨張=カネ余りがもたらした結果であって、サプライチェーンの滞りや、脱炭素化に伴う資源価格の急騰は物価上昇のきっかけに過ぎない。

 主要国の中銀はリーマン・ショック以降、経済危機からの回復を目的に「量的緩和政策」を維持し、マネーの量を増やし続けてきた。その結果、各国通貨の価値は薄まり、モノの値段が押し上げられるのは当然だ。最近の物価上昇は一時的な現象ではなく、今後も続く構造的な問題なのだ。

インフレ後追いする金利

 米国の「高インフレ」の波及経路として、市場関係者が注視しているのが、米長期金利(米10年国債利回り)の高騰である。その動向は株式市場や社債市場に大きな影響をもたらすので、FRBをはじめ中銀は、米長期金利を常に監視している。

 米長期金利の先行きを左右するのがインフレ率だ。1960年から現在まで、米長期金利を俯瞰(ふかん)すると、おおむね米インフレ率より高めに推移している(図2)。つまり、通常は実質金利(長期金利-インフレ率)がプラスになっている。

 しかし70年代の2度にわたるオイルショック時は実質金利がマイナスだった。当時の状況を振り返ると、73年1月に3・6%だったインフレ率は、第1次オイルショックの影響で74年末は12%台に跳ね上がっている。それを後追いして、長期金利も6・5%から8・4%に上昇した。

 これはFRBの中で「物価上昇は一時的」という思いこみがあり、積極的に対応しなかったからだった。初めこそ、インフレ率は77年には5%前後に低下し、その読みは正しかったように見えたが、その後の第2次オイルショックで物価は再び急騰し、80年には15%に達した。ここでも長期金利は、インフレ率上昇の後に、上昇傾向をたどることになる。

 今、CPIが7%に達する中、長期金利は1・8%台にとどまり、実質金利は大幅なマイナスになっている。しかし、ここで「米長期金利はインフレ率を後追いする」という過去の経験、特に70年代から80年代の動きに照らせば、米長期金利は今後、さらに上昇する可能性が高いといえよう。

「大恐慌」の教訓

 その場合、過去40年間も続く金利低下局面で積み上が…

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週刊エコノミスト

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