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経済・企業 とことん学ぶインフレ 

構造的なインフレで世界経済が転換点を迎える中、日銀はどのように動くべきか=佐々木融

黒田東彦総裁は現在の大規模な金融緩和を当面維持する姿勢だ Bloomberg
黒田東彦総裁は現在の大規模な金融緩和を当面維持する姿勢だ Bloomberg

とことん学ぶ4 日銀の選択 構造的な世界インフレで政策の見直し圧力高まる=佐々木融

 世界でインフレ率の上昇が顕著だ。JPモルガンの集計によると、日本を除く先進国の消費者物価指数(CPI)前年比はプラス5・3%と数字がさかのぼれる1991年以降では最も高い伸びとなっている。当初は一過性と捉えられていたインフレ率の上昇は、最近では「構造的な要因」も影響していると考えられ始めている。筆者も、これまで30年近く続いてきたディスインフレの時代は終了し、今後はインフレ率が比較的高止まりする時代になると考えている。

世界を覆う三つの変化

 その理由の一つ目は、人口動態の変化だ。世界的にこれまでのような労働力が豊富だった時代から、不足する時代となり始めている。90年代から2000年代には東欧や中国の労働力が世界の市場に参入した。さらに、この頃は先進国ではベビーブーマーの多くが 30〜40歳代で、労働力の中心だった。つまり、世界は労働力であふれていた。しかし、今や東欧や中国の労働力も安くない。更に、今後急に世界市場に供給され、利用可能になりそうな大きな安い労働力は見当たらない。先進国ではあと数年でベビーブーマーは全て60歳以上となる。この流れは新型コロナウイルス感染拡大前から進んでいたが、感染拡大が高齢者の退職を早めるなどした結果、動きが加速してしまった可能性がある。

 二つ目は、保護主義や閉鎖的な政策の拡大である。米国ではトランプ政権以降、移民に対して厳しい政策を取るようになり、17年から21年までの移民(大部分は生産年齢)流入は、従来トレンドと比べ累積300万人少なくなったと推計される。この結果、米国でも生産年齢人口は19年にピークをつけた可能性がある。また、20年末をもって欧州連合(EU)から離脱した英国は、東欧などからの移民に労働力を頼ることが難しくなっている。

 三つ目は世界的な脱炭素の潮流だ。今後、原油など化石燃料に対する設備投資が難しくなる一方、需要はそう簡単には減少しない。新興国経済の発展に伴い当面は増加するとの見通しが一般的だ。この結果、少なくともこれから数年間は需給は逼迫(ひっぱく)してしまい、化石燃料の価格が上昇しやすい環境が当面続くと考えられる。

 特に、保護主義と脱炭素については、イデオロギーが経済効率に優先されるという点でこれまでと異なる重要な変化だ。これまでの経済活動は、何が効率的で、収益力を高めるためには何を選択すべきかという視点が優先された。しかし、今やそうした視点は自国民優先、環境優先という視点の後に来るようになっている。どちらが良いのかの議論はともかく、経済的には非効率となり、物価が上昇しやすい環境となる可能性は高いと考えられる。

 日本も、インフレ率が高まり始めている。日本の国内企業物価指数は昨年11月にはオイルショック以来、41年ぶりに9%台まで…

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週刊エコノミスト

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