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経済・企業 とことん学ぶインフレ 

Q&A世界で一斉にインフレが起こるとどうなる? 素朴な4つの疑問を解決=永濱利廣

輸入物価の状況も密接にかかわっている Bloomberg
輸入物価の状況も密接にかかわっている Bloomberg

基本を押さえる2 インフレの知識 先行きを見極めるための「四つの重要ポイント」=永濱利廣

 Q1 インフレには良しあしがある?

 インフレは需要と供給の関係から、(1)「デマンドプル・インフレ」と(2)「コストプッシュ・インフレ」──の二つに大別される。(1)は需要側の要因が大きいインフレで、需要の拡大によって購買意欲が衰えずに物価が上昇することが特徴だ。この場合、完全雇用に至っていなければ景気は良くなり、実質賃金も上がりやすくなるため、一般的に“良いインフレ”とされる。

 一方、(2)は供給側の要因が大きいインフレだ。通常は、原油や穀物価格の上昇などに伴う輸入物価の上昇により生じることが多く、所得が海外に流出して景気の悪化を伴う。実質賃金も下がりやすくなるため、一般的に“悪いインフレ”とされる。そして、(2)が深刻化して、経済活動の停滞と物価の持続的な上昇が併存する状態になることを「スタグフレーション」(スタグネーション〈停滞〉とインフレの合成語)と呼ぶ。

 起きているインフレが、デマンドプルとコストプッシュ、どちらなのかを判断するには、「消費者物価指数」(CPI)と「GDPデフレーター」を比較する必要がある(図1)。CPIは輸入物価上昇が押し上げ要因になるのに対し、GDPデフレーターは輸入物価上昇が所得の海外流出要因として押し下げ要因になるためだ。

 直近のCPIとGDPデフレーターを比較すると、CPIはプラス幅を拡大しているのに対し、GDPデフレーターはマイナス幅を拡大している。つまり、日本のインフレは輸入物価の上昇によるコストプッシュ、すなわち悪いインフレであることが分かる。

 Q2 損や得をするのは誰?

 モノやサービスの価格と貨幣の相対的な価値で比較すると、インフレは貨幣の価値が下がり、モノやサービスの価格が上がる一方で、デフレは貨幣の価値が上がり、モノやサービスの価格が下がることになる。

 このため、保有資産に占める現預金の割合が低い企業や個人はインフレで得をする傾向があり、逆に現預金保有割合が高い企業や個人は損をする傾向がある。

 また、インフレになっても名目債務の金額は変わらないため、保有資産に対する負債の割合が高い企業や人もインフレで得をする一方で、債権を多く保有している企業や個人は損をしやすい。

 インフレでは持続的に物価が上がるため、支出性向の高い企業や個人は財やサービスを割安で買えることで得をしやすく、支出性向の低い企業や個人は相対的に財やサービスを“高値づかみ”して損をしやすい。

 デマンドプル・インフレに限っての特色もある。物価も所得も上がりやすいため、個人では勤労者世帯が得をしやすい一方で、現預金保有割合の高い高齢無職世帯では年金が物価上昇率ほど上がらないため損をしやすいといえる。また、事業所ベースでは、企業業績が上がりやすい民間企業従業者は収入が…

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