中古車は1年で5割値上がり 米FRBは「インフレ退治」できるのか=鈴木敏之
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とことん学ぶ1 米国物価動向 原油・人手・物流が絡む上昇 過熱なら強硬な引き締めも=鈴木敏之
米消費者物価指数(CPI)のインフレ率(2021年12月のCPI前年同月比)が7%に達した。インフレ動向が支持率に響くバイデン政権としては、許容できる数字ではなく、物価安定を任務の一つとして金融政策を担う米連邦準備制度理事会(FRB)は無論であるが、大統領も議会もインフレ抑制に傾斜しだしている。
1月11日、パウエルFRB議長再任を承認する上院の公聴会で、トゥーミー上院議員が、インフレをコロナの次の米国の「敵と位置づける」という発言をした。パウエル議長も「物価安定と雇用最大化が使命であるが、今は、物価安定を重くみて、対処する」と、その公聴会で発言した。
戦いを挑めば、敗北は許されないのが米国である。だからといって、コロナ禍の中で、インフレを抑えるためとしても過度に経済を冷やすことも許されない。はたして景気後退なきインフレ抑制に勝算はあるのかが問われる。
中古車は5割値上がり
今のインフレを抑制することは、容易ではなさそうである。需要が強過ぎるのであれば、金融引き締めで需要を減らすことでインフレを抑制できる。ところが今のインフレは供給サイドに原因がある。
まず、原油価格である。シェール革命を経て、米国は大産油国となり、インフレを引き起こす原油価格の上昇におびえる必要はないはずであったが、採掘への制約が大きくなっていることなどでシェールオイルのリグ(掘削装置)は、18年のピークの半分ほどしか稼働していない。
国民は、車にガソリンを入れるとき、また、暖房燃料の請求書を確認するときにインフレを感じる。結局、先行きのインフレを左右する期待インフレ率も原油価格次第である(図1)。産油国は増産に慎重であり、温暖化を止める政治的要請も強い中で当面、原油価格の低下に多くを望めない。
ここへきてインフレ面の悩ましさを増している問題が、賃金上昇である。コロナの感染拡大で、2300万人の雇用が奪われた。経済、雇用は回復を見たが、復職できていない人数は、357万人もいる。
ところが、早期の引退、コロナ禍のもと社会経済活動の制約があることで労働参加率が高まらない。このため、人手不足が深刻化している。12月の失業率は3・9%となったが、これは、米連邦公開市場委員会(FOMC)のみる完全雇用失業率4%を下回っている。その中で、賃金上昇の動きも目立ちだしている。
半導体や物流の滞りによるサプライチェーンの目詰まりによる供給制約も物価上昇も厳しいものがある。典型的なのが、中古車価格であるが、12月のCPIの統計で、中古車の価格指数は、前月比3・5%も上がっている。年率換算すれば51・1%である。
さらに厄介なのが住宅の値動きだ。住宅価格が上がると時間をおいて家賃が上昇し、物価統計では、帰属家賃が上がる。…
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週刊エコノミスト
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