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「悪いインフレ」に勝つための世代ごとの戦略=長内智
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「悪いインフレ」克服する株・外貨預金・ETFの選び方
<資産形成 3>
世界の金融市場で、原油をはじめとする国際商品価格の上昇などに伴うインフレ高進と米国の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに対する警戒感が高まっている。FRBは、歴史的な高インフレを抑制するために、早ければ2022年3月16日にも政策金利を引き上げて「利上げ局面」に移行する予定だ。金融市場は、しばらくインフレ動向やFRBの利上げに翻弄されると見込まれる。問題の本質は、実体経済の成長と企業収益の増加傾向が持続するかという点だ。今後は米国を中心に経済指標と企業業績をしっかりと見極めていくことが一層重要となる。二つのケースを考えよう。
ETFは金融株連動に
まず、適度なインフレと利上げで経済成長と企業収益の拡大が維持される場合。通常、米国株価は上昇傾向が続く。これは前回の15年12月以降の利上げ局面のケースだ。また、利上げで米国の国債利回りが上昇し、それに伴う日米金利差の拡大で円安・ドル高が進行することも想定される。家計は、米国株への投資や米ドル建て外貨預金、円安の恩恵を受ける日本の輸出関連企業への投資を行うことが有効な投資戦略となる。
米国長期金利と日本の銀行を中心とする金融業の株価との連動性も知られている(図1)。米国の金利上昇局面は、日本の銀行株や保険株、金融業の株価に連動するETF(上場投資信託)への投資も検討したい。
次に、インフレの高進と急ピッチな利上げにより、景気が腰折れして企業収益の悪化も見込まれる場合。世界的に株価が急落し、為替レートが急変動することが想定される。家計は資産運用で損失が生じるリスクに備える必要がある。実際の見極めは難しいが、経済指標や企業決算を受けて先行きの不透明感が強まってきたら、現預金の比率を高めたい。特にリスク許容度の低い人は、杞憂であっても早めに行動したほうがよいだろう。
また、FRBの利上げについて、米国の長短金利差(長期金利─短期金利)の動向も重要だ。米国の歴史的な経験則として、長短金利差のプラス幅が縮小して、マイナス圏に落ち込むと、その後、景気後退に陥るというものが知られている。実際にそうなれば、家計は大きな損失を余儀なくされるリスクがある。過去の事例は、利上げ局面の終盤以降に長短金利差がマイナスとなりやすく、その点も少し頭に入れておきたい。
国内で国際商品価格の上昇と円安を背景に値上げが相次ぎ、インフレ圧力が着実に高まっている。賃金の上昇が追いつかず、家計にとって「悪いインフレ」となる公算が大きい。金利も少し上昇しており、住宅ローン金利を小幅に引き上げる動きもみられる。こうした環境下で、家計は消費支出を抑える「生活防衛」と、インフレと金利上昇を見据えた資産運用が重要となる。
生活防衛は、娯楽品・サービスなど不要不急の支出抑制から始めるのが基本だ。食費…
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週刊エコノミスト
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