投資・運用 資産形成・年金・仕事
「早期退職したい」ときの年金3パターンの智恵=横川由理
有料記事
早期退職なら 独立・再就職・バイト…で変わる支給額とメリットの見極め方=横川由理
<年金改正3>
40〜50代で早期退職するとき、注意したいのが年金の視点だ。例えば、上場会社に勤務するAさんは「この会社にいても先がない」と、2022年3月末での早期退職を決断した。現在、43歳のAさんが最も気になったことは、退職後の働き方と老後の年金額の関係だろう。
会社員の年金は、「国民年金」と「厚生年金」の“2階建て”となっている(図1)。退職後はどの年金に加入するのか、あるいは何歳まで働くのかによって大きな違いが生じる。“1階部分”である国民年金から支払われる「老齢基礎年金」は20歳から60歳になるまでの40年間にわたって国民年金保険料を納めると、65歳から満額の78万900円(21年度価格)が支給される。
会社員や公務員が加入する“2階部分”の「厚生年金」は最長70歳まで加入できる。給与明細を見れば「厚生年金保険料」としか記載されていないが、厚生年金保険料には国民年金の保険料が含まれているので安心してほしい。保険料は報酬額に応じて18・3%を労使折半で負担している。
22年3月時点におけるAさんの年金額は、老齢厚生年金約55万円に加え、老齢基礎年金約41万円の合計96万円。
Aさんは大学時代の国民年金保険料が「未納」になっているが、退職しているのであれば60歳以降に任意で納めることで年金を増やすことも可能だ。
Aさんの年金額が働き方によってどう変化するのかを(1)独立・起業、(2)再就職、(3)再就職しない──の三つのケースで見ていこう。
基金で生涯の年金準備
個人事業主は、国民年金保険料1万6610円(21年度価格、月額)を60歳になるまで負担する。大学時代の未納期間30カ月分を任意加入することで満額の78万900円が支給される。65歳からの年金額は厚生年金との合計133万円となる。なお、この金額は(3)の再就職しないケースと同じだ。国民年金は増えるが、厚生年金は退職時と変わらないからだ。注意点は、妻の国民年金保険料も同額負担するということ。さらに国民健康保険料の負担も重くなる。独立後の所得を400万円と仮定した場合、国民健康保険料と介護保険料の合計は年間55万8900円にも達する(横浜市の場合)。
個人事業主は、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)や国民年金基金に加入して年金額を増やすことも検討に値するだろう。国民年金基金とは任意で加入する自営業者の公的年金を指す。ここでは一生涯受け取れる国民年金基金を検討してみたい。
国民年金基金は、年金の種類を選ぶことができる。今回は終身年金のB型を選択したとする。ちなみにA型は早期に死亡しても支給から15年間の保証があるが、B型は保証がない代わりに掛け金が安くなる。月々の掛け金2万4450円を60歳までの16年8カ月間支払うと、年金額は31万4100円となる。
掛け金の合計は489万円。年金額で除すと15・56年。つまり、Aさんが80歳7カ月まで年金を受け取った時点で、掛け金分を回収し、その後の収支はプラスとなる。
さ…
残り1100文字(全文2400文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める