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シン・転職市場が分かるキーワード「3プラス1」=藤井薫
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「越境転職」時代 「お試し」で見つける真の適職 副業や学び直しで可能性を“掘る”=藤井薫
<新働き方5>
転職マーケットが大きく変化している。背景にあるのは、産業の「シフト」「メルト」の二つから説明できる。
シフトとは産業構造の変化のことだ。自動車業界の「モノ作り」から「モビリティーサービス」への移り変わりが代表例だが、同様の動きは各業界で見られる。シフトが進めば「メルト(溶ける)」が起こる。つまり、各企業は生き残りをかけて業種転換・進出を図っているため、業種の垣根が崩れ、明確な区別がなくなっていく。コロナ禍以降、将来のキャリアを考え直している(図1)。
「異業種で異職種」に道
越境転職の時代に意識しておきたいキーワードは三つある。「お試し」「新たなものさし」「リスキリング」だ。
「お試し」とは、会社を辞めることなく、社外での機会を活用し、「自身の経験・スキルの生かし方」「やりたいこと・夢中になれること」を探る活動ということだ。
リクルートは、社会人インターンシップ事業「サンカク」「ふるさと副業」などの機会を提供している。さまざまな企業が提示する課題に対し、参加者自身の知見を生かして議論し、解決策を提案するプログラムだ。最近6年間で、プログラムを提供する企業数は8倍に増えた。これを機に新たな強みを自覚し転職を果たす人もいる。
例えば、Aさん(30代)は人材開発企業のIT部門に勤務していた。AI(人工知能)領域にも携わっており、知見を深めたいと考え、AI開発企業の社会人インターンシップに参加した。テーマは「機械学習モデルの効果的な運用方法」。それまでデータサイエンティストの道を進みかけていたAさんだったが、ディスカッションを通じて「運用」領域への興味を強め、方向転換。運用側インフラの中でも今後主流になる「クラウド」分野でキャリアを築こうと決意し、クラウドサービスの有力企業に転職した。
お試しの機会としては「副業」も有効だ。自身が得意とするスキルを副業で他社に提供しながら、その会社で本業ではできない新たな業務にも携わる。「面白い」「向いている」と手応えを得れば、本格的にその領域への転職を図る手もある。近年、「副業」を解禁する企業が増え、企業と副業希望者のマッチングサービスも増えている。いきなり異分野へ転職するとなると不安が大きいが、「お試し」機会を活用することでハードルが下がるだろう。
「新たなものさし」は業種・職種経験だけにとらわれない経験・スキルを評価するものだ。これにより、異業種・異職種への「越境転職」が増加している。リクルートエージェントで2009〜20年度の転職決定者を分析したデータによると、「同業種・同職種」への転職パターンは減少し、17年度以降は「異業種・異職種」への転職が最多になった。20年度は転職決定者のうち36・1%が「異業種・異職種」転職を果たしている(図2)。その傾向は若手層に限らず、40代以降のミドルシニア層にも見られる。
例えば、生命保険会社の営業管理職から食品メーカーの品質管理部長へと、一見関連性がないポジションへ転職した50代半ばの…
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週刊エコノミスト
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