FRB 強固な景気に突然の“変節” 今夏にも量的引き締め実施か=井上祐介
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米国で金融政策が大きな転換期を迎えている。昨年12月に開催された米連邦準備制度理事会(FRB)の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利であるFF(フェデラルファンド・レート)金利の誘導目標を0~0・25%に据え置く一方、2020年3月に再開した量的緩和(QE)による国債等の資産購入の減額(テーパリング)ペースの加速を決定した。この結果、QEは3月前半に終了する見込みとなり、政策金利引き上げの時期についても早まる可能性が高まった。
続く1月FOMCでは、近いうちに利上げが妥当との判断が示され、3月FOMCでの利上げが決定的となった。声明文と同時に公表された「バランスシート(保有資産残高)縮小の方針」の中では、同縮小は利上げ開始後となること、長期的には主に国債のみを保有することなどが示された。
FRBがタカ派姿勢を鮮明にしたと市場関係者を驚かせたのが、12月のFOMC議事要旨(1月5日公開)だ。QE終了や利上げだけでなく、FRBの保有資産残高を削減する量的引き締め(QT)にも、想定以上に踏み込んだ議論が行われていたことが明らかになった。これに金融市場が動揺した。
資産9兆ドルに急拡大
新型コロナウイルス感染拡大に伴う大規模な金融緩和により、FRBの保有資産は20年1月時点の約4兆ドル(当時約440兆円)から約9兆ドルにまで拡大(図1)。QTはこれを巻き戻すことで、市場関係者の間では、今年3月実施が確実視される最初の利上げから、比較的早期にQTが開始されるとの判断が大勢である。
前回の13年からの金融引き締め局面では、テーパリング開始から初回利上げまでの期間が2年、初回利上げからQT開始までの期間が1年9カ月と緩やかな政策転換を行った。今回は、テーパリング開始が昨年11月だったので、QTが今年夏実施となれば、政策転換の間隔は1年に満たない短さである。
FOMC参加者の初回利上げ時期の予想を振り返ると、21年3月時点では「24年以降」とする意見が多数派だったが、同6月には「23年中」、9月には「22年中」と次々に前倒しされてきた。22年中の利上げの回数については、昨年12月時点では「3回」がコンセンサスだったが(図2)、足元では、22年中の利上げ回数はさらに多くなるとみられている。
FRBのパウエル議長は1月26日、FOMC後の記者会見で、3月の初回の利上げ幅を、従来の大方の見方だった0・25%ではなく0・5%とする可能性や、毎回の会合で利上げを実施する可能性を否定しなかった。
雇用回復の勢い続く
FRBが金融引き締めに急旋回した理由は、前回の金融緩和終了・利上げ局面と比較して、景気の強さ、雇用の回復度合い、インフレの水準や範囲、バランスシートの規模などが大きく異なることが背景にある。
パウエル議長は、「景気の現状は、15年に利上げを開始した当時と比べ、ずっと強…
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週刊エコノミスト
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