バイデン政権 FRBと“異例の蜜月”に潜む三つの懸念材料=安井明彦
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就任から1年の節目となった1月19日の記者会見で、バイデン米大統領は「FRB(米連邦準備制度理事会)には物価の高止まりを阻止する重大な役割がある」と、その手腕への期待を表明した。「FRBの独立性を尊重する」とも述べており、しばしばFRBに圧力をかけてきたトランプ前大統領とは様変わりだ。
インフレ対策を重視するFRBと政権政党の蜜月は珍しい。通常であれば、景気の下押しを嫌う政権政党は、インフレを気にするFRBを煙たがる。1992年の大統領選挙で再選に失敗したブッシュ(父)元大統領は、当時のグリーンスパンFRB議長による金融緩和が遅かったとして、「再任したのに、(彼には)失望させられた」と公言していたほどだ。
良好な関係の要因として、今年11月の議会中間選挙に向け、インフレがバイデン政権のアキレスけんになっていることが挙げられる。1月中旬に米FOXニュースが行った世論調査では、インフレを懸念する回答者が8割を超え、7割程度だった新型コロナウイルスへの懸念を上回った。同時期に米モーニング・コンサルト社が行った世論調査では、約6割が高インフレの責任はバイデン政権にあると答えている。
本来であれば、堅調な景気と雇用の回復は、バイデン政権の追い風だ。しかし、有権者の経済に対する評価は、日々の暮らしで目にする価格の変化に左右される。英『エコノミスト』誌などが米国で行った世論調査では、過半数が経済状況を判断する指標に物価を挙げており、失業率などを大きく上回っている(図)。
バイデン政権が独自に採れるインフレ対策は限られる。オバマ政権で大統領経済諮問委員会委員長を務めたファーマン氏は、「(期待できるのは)辛抱とFRBだけ」と述べている。
もっとも、異例の蜜月には、三つの懸念材料がある。
第一…
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週刊エコノミスト
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