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《最新特集》天然ガス① 再エネ普及までの「つなぎ」燃料 石炭火力よりは低炭素のガス火力向けに需要見込まれる=加藤 学
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天然ガス1 発電から水素・アンモニア原料まで 再エネ時代へつなぐ低炭素燃料=加藤学
天然ガスと液化天然ガス(LNG)は、従来、クリーンな化石燃料として位置づけられてきた。ガス火力発電による二酸化炭素(CO2)排出量は石炭火力発電の約2分の1であるからだ。
ただ2015年のパリ協定採択以降、欧州各国でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)宣言が相次ぎ、気候変動問題対応に向けた国際的な取り組みが一気に加速した。化石燃料である天然ガス・LNGについても、例外扱いしない機運が高まっている。この動きは、欧米大手石油資本による石油・ガス開発・生産プロジェクトへの投資の手控えや金融機関を中心とする化石燃料産業からのダイベストメント(投資撤退)にも反映されている。
現実的には、再エネを主体とするエネルギー構造転換を一足飛びに達成することは困難である。天然ガス・LNGの開発・生産プロジェクトへの投資の手控えが起きているのは上述の通りだが、そのことが、欧州やアジアのスポット市場での天然ガス価格の異常な高騰を招く要因の一つになっているし、将来の需給逼迫(ひっぱく)を生むことになる。
昨年は、中国で石炭火力発電の稼働縮小により断続的な停電に見舞われ、今年に入ってカザフスタンでは液化石油ガス(LPG)値上げをきっかけに暴動が発生した。性急なエネルギー構造転換は、世界各地で経済社会を揺るがす要因ともなる。
更に、ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア産ガスの供給不安をあおり、欧州ではロシア以外のガス調達先である米国や中東からLNG調達を拡大させる取り組み構築が急務となっている。
中印で需要急増
そうした状況ながら、国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の天然ガス需要は50年に5112立方キロメートルに達する。これは20年比27%増に当たる(図)。
天然ガス・LNG需要は、アジアでの拡大が顕著だ。IEAの上記予測では、30年の天然ガス需要が20年比で中国では約1・4倍、インドでは約2・1倍、東南アジアでは約1・4倍に拡大すると試算している(公表政策シナリオ=STEPS=ベース)。石炭火力発電への依存度が高いアジアの国々では、これの段階的な縮小に向けて、再生可能エネルギー導入とともに、LNGを燃料とするガス火力発電への移行が計画されているからだ。
IEAのビロル事務局長は、21年10月にオン…
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週刊エコノミスト
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