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《戦時経済》【ウクライナ侵攻】ロシアはアルミ需給の調整役、ニッケル相場も取引停止の大混乱=本間隆行
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非鉄金属 需給にひっ迫懸念のアルミ ニッケルは混乱で取引停止=本間隆行
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、エネルギーや食料だけでなく、アルミニウムやニッケルといった非鉄金属も、ロシアからの供給途絶リスクの高まりによって価格が急騰している。米国政府が最重要物資ともいえる原油のロシアからの輸入を禁止に踏み切る方向で検討に入ったことが報じられると、3月7日にはこれらの金属は瞬く間に史上最高値を更新する水準へ急騰した。
非鉄金属取引の指標価格であるロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物価格は、ウクライナ侵攻前に1トン当たり3030ドル前後で取引されていたアルミニウムは、3月7日には一時4073ドルまで上昇。2月初めに1トン当たり2万2000ドル台だったニッケルに至っては、2007年に記録した5万1800ドルの最高値を更新し、3月7日には5万5000ドルまで上昇。その後、LMEは前代未聞の取引停止を決め、市場はパニックに陥っている。
非鉄金属は現代の生活にとっては不可欠だ。アルミニウムは加工が容易なことから、身近なところではスマートフォンのボディーなどの電子機器や電子部品に使われ、包装用として缶や箔(はく)としても使われている。金属の中でも比重が小さいため、軽量化素材として自動車や航空機、鉄道など輸送用機械向けの需要が特に大きく、全体の4割程度を占めている。
電池素材の需要拡大
また、ニッケルはステンレス鋼、工具鋼といった特殊鋼の生産には不可欠な原料成分であり、最近では2次電池の正極材や電子部品の素材としての需要も拡大基調にあった。とりわけ、脱炭素社会の構築に向けて、エネルギー消費量の削減や消費効率の向上に寄与する性質から、今後もアルミニウム、ニッケルを中心に非鉄金属需要は一段と高まると期待されている。
そうした世界的な需要拡大への期待とは裏腹に、供給面では資源の偏在性も当然あるため…
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週刊エコノミスト
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