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《戦時経済》【ウクライナ侵攻】ロシア経済が制裁で受けるダメージの大きさ=土田陽介

ロシア経済 原油依存の構造に大打撃 デフォルトの影響は限定的=土田陽介

 ロシア経済の成長パターンを考えるとき、原油価格との因果関係があることに疑いの余地はない。とはいえ、それはロシア経済が世界経済に組み込まれているからこそ成立する。2月24日にロシアがウクライナに大規模な軍事侵攻に打って出て以降、欧米を中心とする国際社会はロシアに対してさまざまな経済制裁を科している。国際銀行間通信協会(SWIFT)排除や、ロシア中銀の外貨資産の凍結がその代表的な手段だが、そうした欧米からの経済制裁を受けて、ロシア経済は世界経済から急速に切り離されようとしている。

 ロシア自体が、自らを世界経済から切り離そうとしている側面もある。SWIFT排除の一報を受けて、ロシアの通貨ルーブルは大暴落した。この事態を受けてロシアは各種の資本規制を導入すると同時に、3月1日から実質的な公定レートを導入し、ルーブルの下落を抑制しようとする措置を取った。「国際金融のトリレンマ」(国際金融で同時に実現できない三つの政策)で整理すれば、ロシアは為替レートの安定(管理相場制度を導入)と金融政策の自立性(国債の中銀による消化)を確保する代わりに、「資本移動の自由」を制限したと理解できる。

限られる国債発行規模

 こうした中で、ロシア国債のデフォルト(債務不履行)観測が高まっている。ロシアの海外投資家向けの国債は、3月16日以降に順次支払いの期限を迎えるとされるが、遅延なく支払いが行われるかどうか定かではない。すでに主要な格付け会社は、ロシアの格付けを投機級(ジャンク債)に引き下げている。国際金融協会(IIF)も2月末時点で、ロシア国債が近いうちにデフォルトする可能性が高いという見解を示している。

 資料上の制約から資金循環統計ベースとなるが、ロシア国債の発行規模は2020年末時点で名目GDP(国内総生産)の16・7%程度に過ぎない。新型コロナウイルス禍に伴う景気の悪化を受け、先進各国が名目GDP比100%を超える規模となっているのに比べれば、ロシアの国債発行規模は限定的である(図2)。そのうち、外国人投資家の保有比率は4分の1程度、つまりロシアのGDPの4%強であったとされる。デフォルトすれば、この部分の償還が順次行われなくなるイメージだ。

 それでも年明け以降、ロシアを取り巻く国際環境が悪化してきたため、外国人投資家はロシア国債を資産運用の対象から徐々に外していたと考えられる。したがって、外国人投資家が保有するロシア国債の規模は、20年末時点よりも少なくなっている可能性が高い。そうしたこともあり、ロシア国債のデフォルトが世界的な金融不安を呼び起こす展開は考えにくい。

 加えて、ロシア国内向けの国債は、ロシア中銀が流通市場だけではなく発行市場でも受け入れることで消化を試みる可能性がある。しかし、外国人投資家によるロシアへの信用は失墜し、もはや外国から資金を調達することは困難だ。いずれにせよ、ロシアと世界経済の間の距離はどんどん離れていく方向にある。そのため、ロシア経済の最大の武器である石油やガスの輸出に関しても…

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