経済・企業 世界戦時経済
《戦時経済》【ウクライナ侵攻】実はロシアだけでなくウクライナとも関係が深い中国の立ち位置=三尾幸吉郎
有料記事
仲介役 中国に要請が集まる背景にロシアとの経済補完関係=三尾幸吉郎
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、中国にウクライナとロシアの「仲介役」を期待する声が高まってきた。欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外務・安全保障政策上級代表が3月4日、「中国政府だけがロシア・ウクライナ戦争を仲介することができる」として、中国に対しロシアへの影響力を行使するよう要請したことを明らかにした。その背景には中国とロシアの親密な経済関係がある。
ロシア経済は農業、資源エネルギー、軍需産業に強みがある一方、製造業に弱みがある。そして食糧や天然ガスなどを世界に輸出して外貨を稼ぎ、その資金で欧米や中国などから工業製品を購入する貿易構造となっている(図)。
他方、中国は世界の工場と呼ばれる製造大国だが、資源エネルギー調達に問題を抱えている。中国は原油、天然ガス、鉄や銅などのベースメタル(埋蔵量・産出量が多く、精錬も容易な金属)、レアメタル(希少金属)などの資源エネルギーをロシアから輸入し、家電や繊維などさまざまな工業製品をロシアへ輸出している。このようにロシア経済と中国経済は相互に補完する関係にある。
したがって、欧米がロシアに対し厳しい経済制裁を発動しても、中国がそれに加わらなければ効果は限定的だろう。ロシアが欧米に輸出できなくなった天然ガスは中国が欲しがるものだし、ロシアが調達に困る欧米製の工業製品は中国製でほとんどを代替できると見られるからだ。
他方、中国はウクライナとも親密な経済関係にある。両国は1992年に国交を樹立した後、2011年には戦略的パートナーシップ関係を構築し、20年には中国・武漢とウクライナの首都キエフを結ぶ国際貨物列車「中欧班列」の運行を開始している。ウクライナの貿易のうち中国は約15%を占めており、ウクライナはトウモロコシや鉄鉱石などを中国へ輸出する一方、スマホやパソコンなど…
残り549文字(全文1349文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める