経済・企業 戦時日本経済
《戦時日本経済》ウクライナ侵攻の買い銘柄はココ=菊地正俊
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日本株 鉱業、卸売り、非鉄金属、海運のバリュー銘柄注目=菊地正俊
米国は利上げ、欧州はウクライナ危機の当事者地域である中、アジアに世界の株式投資資金がシフトしてもおかしくない。東南アジア株には資金が流入しているが、日本株には足元、入っていない。資源国でもあるインドネシアの総合株価指数は2022年3月1日に史上最高値を更新したほか、タイSET指数も年初来上昇している。新興国は米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げで資金流出につながる懸念があったが、ウクライナ侵攻で利上げペースが鈍化する見通しとなったことも、新興国への資金流入につながった。
アジア注目も日本敬遠
岸田文雄政権の政策に対する外国人投資家の評価が低いことも、外国人投資家の日本株敬遠につながっている。ただ、東証株価指数(TOPIX)は年初来、S&P500や汎(はん)欧州株価指数(Stoxx600)をアウトパフォーム(ベンチマークを上回ること)しており、欧米よりは日本株が相対的に良い状況は続くだろう。
米国の金融引き締め時に、投資家心理を示す米国株のVIX指数(恐怖指数)が高まる傾向がある。また、ウクライナ侵攻の前から気候変動対策に伴う物価上昇を示す「グリーンフレーション」で、資源価格は上昇傾向にあった。ウクライナ危機は世界経済・株式市場の既往のトレンドを加速・悪化させただけともいえる。
東証33業種の中で、ウクライナ侵攻から相対的に恩恵を受けるのは鉱業、卸売り(商社)、非鉄金属、海運などだろう(表)。これら業種にはバリュー(割安)銘柄が多い。原油価格は1バレル=115ドル超と08年以来の高値に上昇した。地政学的リスクの継続で、資源関連株が注目される状況が続くだろう。石油企業は世界の脱炭素化からの中長期的な悪影響が懸念されるが、石油開発大手、INPEXは30年までに天然ガス・石油で稼いだキャッシュフローを積極的に再生エネルギー開発に回して、50年にカーボンニュートラルを達成する目標も掲げる。
市場が軟調な中でも、3月3日に伊藤忠商事、丸紅は上場来高値を更新した。英シェルがロシア極東の石油ガス開発事業であるサハリン2から撤退を発表する中、サハリン2の権益を持つ三菱商事、三井物産の対応が注目される。
みずほ証券エクイティ調査部アナリストの試算によると、サハリン2からの天然ガス供給がなくなった場合、両社の21年度純利益への悪影響は1~2%にとどまるが、完全撤退となった場合は売却先が見つけられなければ、減損が生じる可能性もある。貴金属高を追い風に、住友金属鉱山の株価も年初来4割強上昇し、17年以来の高値に上昇した。
日本郵船、商船三井の株価も昨秋の高値を抜いてきたが、21年度の会社予想ベースPER(株価収益率)は3倍以下とまだ割安感が強い。ウクライナ危機でスタグフレーション(インフレと景気後退の同時進行)懸念が出…
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週刊エコノミスト
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