国際・政治 世界経済入門
《世界経済入門》欧米に対向する中国「CIPS」、“人民元限定”で実力に疑問符=露口洋介
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焦点3 国際決済網の戦い 欧米に対抗する中国「CIPS」 “人民元限定”で実力に疑問符=露口洋介
欧州連合(EU)は3月2日、国際決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT(スウィフト))からロシアの7銀行を排除することを決定した。また米国は、国内の銀行に対し、2月24日にロシアの大手銀行5行の米国内銀行口座を通じたドル取引を行うことを禁じた。ある通貨の対外決済は、海外の銀行が通貨発行国の銀行に口座を持ち、両者の間で情報伝達することで行われるので、7行は多種の通貨の、5行はドルの対外決済ができなくなった。
一方で、中国が構築した国際銀行間決済システム(CIPS(シップス))が金融制裁の回避手段となるのではないか──と注目を集めている。
CIPSは、2022年2月末時点で直接参加銀行は76行、そのうち海外直接参加銀行は36行ある。直接参加銀行はCIPSの中に決済用の口座を持ち、国内外の間接参加銀行は直接参加銀行に決済口座を保有する(図)。
その仕組みは、例えば、海外企業Iが間接参加銀行Cに対して中国企業Hへの人民元送金を依頼すると、銀行Cは中国国内の直接参加銀行Aにその情報を伝達し、銀行Cが直接参加銀行Aに保有する口座から人民元が引き落とされる。
直接参加銀行AはCIPSに対し、企業Hが口座を保有する直接参加銀行Bに振り替えを依頼し、CIPS内Aの口座からBの口座に資金が振り替えられる。資金を受け取った銀行Bはその資金を見合いに企業Hの口座に資金を振り込む。
CIPS内の銀行AからBへの振り替えに必要な資金は中国人民銀行の人民元決済システム(CNAPS(シナプス))において、事前にAからCIPSに資金が振り込まれる。一方CIPS内で資金を受け取ったBはCNAPSのCIPS口座経由でBの口座に資金を振り込み、決済は終了する。
中国国外の間接参加銀行Cと中国国内の直接参加銀行Aと…
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週刊エコノミスト
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