国際・政治 世界経済入門
《世界経済入門》100㌦前後で高止まり続く、史上最高値147㌦超えも=芥田知至
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何が起きるか3 原油急騰 100ドル前後で高止まり続く 史上最高値147ドル超えも=芥田知至
原油は国際商品(コモディティー)の代表であり、ドル相場や米金融政策の動向などに敏感な投資対象である。足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始し、今後さらに利上げを進めようとする中で、株式など他のリスク性資産と同様に原油への投資を抑制する圧力になる可能性がある。また、米利上げ観測に伴い、為替市場ではドル高が進んでおり、ドル建ての取引が中心の原油は割高感から価格が抑えられやすくなる面もある。
しかし、こうした米金融政策の動向がかすむほどに、市場関係者はウクライナ情勢という地政学リスク要因に注目している。
原油の国際指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、新型コロナウイルスのオミクロン株出現などを受けて2021年12月2日に1バレル=62・43ドルと3カ月半ぶりの安値をつけた(図1)。その後、オミクロン株の感染拡大への警戒感が後退し、石油需要の増加、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の増産加速への慎重姿勢などを受けて、原油は上昇した。1月に入ると、ウクライナや中東での地政学リスクへの警戒感も押し上げ材料に加わった。
供給不安で乱高下
2月24日には、ロシアがウクライナへの本格的な軍事侵攻を開始し、ロシア産エネルギーの供給不安が強まった。主要7カ国(G7)は緊急首脳会議を開き、ロシアに対し厳しい経済・金融制裁を実施すると表明した。だが当初は、米政権がエネルギー市場に打撃を及ぼす意図はないと説明したことや、ロシアがウクライナとの協議に前向きととれる姿勢を示したことが原油の上値を抑えた。
しかし、その後、相場上昇は加速した。西側諸国によるロシアへの金融制裁の強化や欧米石油メジャーによるロシア事業からの撤退の発表が相次ぎ、相場を押し上げた。3月2日には、OPECプラスが4月も小幅増産にとどめることを決定し、またパウエルFRB議長が15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0・25%の小幅利上げを示唆したことも強材料になった。
7日には、米政権が前日に「欧州諸国とロシア産原油輸入を禁止する可能性」を表明したことや、ロシアがイラン核合意再建交渉に際して、米国の対ロシア制裁がロシアとイランの貿易などに影響しないことを保証するように要求したことが、ロシア産原油の供給減観測やイラン産原油の供給増期待減退につながり、WTIは一時1バレル=130・50ドルまで上昇した。
その後9日には、前日発表の米英によるロシア産原油禁輸が国際原油需給に及ぼす影響は限定的とみられたことに加えて、アラブ首長国連邦(UAE)の駐米大使が原油増産への支持を表明し、OPECに働きかけるとしたことを受けて、WTIは12・1%安と…
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週刊エコノミスト
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