国際・政治

《世界経済入門》円相場は1ドル=120円台定着を巡る攻防。継続性は日銀のスタンス次第=内田稔

何が起きるか5 円安の行方 1ドル=120円台定着は困難も 持続性は日銀のスタンス次第=内田稔

 ウクライナを巡る混乱は、新型コロナウイルスのパンデミックから立ち直りも道半ばの世界経済に追い打ちをかけた。これにより、世界のサプライチェーンの復旧には、なお時間を要する見通しとなった。為替市場を見ると、ドル・円相場はドル高・円安方向に進んでいる。3月22日にはついに対ドルで6年ぶりとなる1ドル=120円台を記録し、今後も大台での定着が現実味を帯びてきた。

足元はインフレで弱い円

 折からの資源価格の騰勢も続いており、世界的にインフレが加速。米連邦準備制度理事会(FRB)も3月16日に政策金利の引き上げを決定し、いよいよゼロ金利の解除に踏み切った。賃金や家賃もじわりと上昇しており、FRBも利上げペースの加速を視野に、量的緩和の巻き戻しと合わせてインフレと対峙(たいじ)していくだろう。

 為替相場は、短期的には金利や金利差の動向に影響を受けやすい。また、金融市場の緊張が続く限り、基軸通貨であるドルの調達が困難になるとの懸念から、為替市場ではドルが値上がりしやすい。金利の先高観に、こうした「有事のドル買い」も加わる結果、当面の間、ドルは堅調に推移しそうだ。

 もっとも、国際通貨基金(IMF)は、2020年時点の水準を引き合いにドルが多くの通貨に対し、過大評価されているとしている。ここからの金利上昇に対するドル高の反応はあまり強いものとはならないだろう。

 加えて、今後の利上げによってインフレを退治できても、景気が水を差されるおそれもある。実際、10年物と2年物の米国債の利回りを結んだイールドカーブ(利回り曲線)の傾きが緩やかになり、フラット化(平坦(へいたん)化)した点に要注意だ(図1)。フラット化は、金融政策に敏感な短期金利が上昇する一方で、景況感を反映しやすい長期金利が低下し、長短金利差が縮小した状態だ。これは先々の米国経済の減速や景気後退入りを示唆している可能性もあるからだ。

 こうしてみると短期的にはドルの続伸を見込むことはできても、景気の先行きに対する見方が慎重さを増すか、インフレの高進に歯止めがかかってくれば、利上げ期待が後退する。緊張が和らげば、「有事のドル買い」も剥落する。年後半にかけて、ドルは緩やかな下落へ転じる可能性が高いだろう。

 一方、円は「インフレ」を切り口として脆弱(ぜいじゃく)さを露呈している。その要因に、日本銀行の金融政策が挙げられる。昨年以降、多くの中央銀行がインフレを抑えるために、金融緩和からの脱却を図ってきたが、日銀は緩和姿勢を維持する構えで、これは来年4月に黒田東彦総裁が任期を迎えるまで変わりそうにない。このことが、日本からみた海外との金利差拡大観測を通じて、円の先安観を強めている。また、資源価格の高騰によって日本の輸入額とともに貿易赤字も拡大している。為替市場の規模に照らせば、貿易赤字が相場に与える影響は限定的だが、円安地合いとあって市場の円安期待を刺激している模様だ。

 これまでは、市場の緊張が高まると、「安全資産」であることへの連想から…

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