新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

国際・政治 世界経済入門 

《世界経済入門》露ショックで対欧輸出が急減、個人消費を冷やすゼロコロナ=関辰一

中国独自の「ゼロコロナ政策」は長期化する可能性も… Bloomberg
中国独自の「ゼロコロナ政策」は長期化する可能性も… Bloomberg

何が起きるか6 中国大低迷 ロシアショックで対欧輸出が急減 個人消費を冷やすゼロコロナ=関辰一

 中国ではウクライナ情勢の悪化が、ガソリン価格の高騰や株安を通じて個人消費の下押し要因となっている。欧米諸国がロシアへの経済制裁を発動し、原油価格が急騰する中、中国のガソリン価格も高騰している。

 中国国家統計局によると、2月のガソリン価格の上昇率は前年同月比23・9%増と前月の同20・7%増から上昇幅が拡大した。これにより消費者物価は押し上げられ、実質所得は押し下げられる。中国の自動車保有率は5人に1台と、日本の約半分であることを踏まえ、消費者物価に占めるガソリンの比率も日本の半分である1%と仮定すれば、ガソリン価格の上昇によって消費者物価は0・2%押し上げられたと考えられる。

 さらに、「ゼロコロナ政策」に伴う厳しい活動制限などを背景に個人消費の低迷が続いている。新型コロナウイルスの新規感染者数は全国で急増しており、3月半ばの感染者数は2020年4月以降で最多を更新した。

 東北部の吉林省長春市では、感染封じ込めに向け全市民約900万人に外出制限が発令された他、製造業の産業集積地である広東省深圳市や東莞市でも厳しい活動制限が実施された。上海市でも3月後半の地下鉄乗客数はコロナ前の20年1月前半の5割の水準にとどまるなど、人出が落ち込んでいる(図1)。これにより外食や旅行といったサービス消費を中心に個人消費が不振に陥っている。

欧露の経済失速が伝播(でんぱ)

 今後を展望すると、輸出と個人消費がともに伸び悩むことで、景気の低迷が続くと見込まれる。感染状況の改善で先行きは世界的に財消費からサービス消費にシフトすると予想され、輸出は鈍化すると見込まれる。財輸出の国内総生産(GDP)シェアはコロナ禍前の19年の水準へ低下するであろう(図2)。

 また、ウクライナ情勢の悪化も輸出の下押し要因となる。経済制裁を受けたロシアの経済は大幅に悪化するとみられる。中国のロシア向け輸出額は21年にロシアの内需拡大を受けて前年比33・5%増と大幅に増加した。22年1〜2月には前年同期比41・4%増と堅調さを維持した。

 今後、先進国との取引が難しくなったロシアは、中国との貿易を増やす可能性があるものの、ロシアの内需縮小による影響を相殺できるか不透明感は強い。もっとも、輸出総額に占めるロシア向けのシェアは2・3%と米国向け(17・1%)や日本向け(4・9%)を下回る。対露財輸出のGDPシェアも0・4%にとどまる。このため、対露輸出が減少したとしても、中国経済への影響はそれほど大きくないといえる。

 一方で、ウクライナ情勢の悪化による欧州経済の下振れが中国経済に与える影響は大きい。経済制裁がロシア経済に打撃となることはもちろんだが、欧州自身も対露輸出の減少や資源高によるインフレ加速で、景気が下振れるだろう。中国の欧州向け輸出は全体の15%を占める。欧州向け財輸出のGDPシェアは2・9%にのぼり、仮に欧州向け輸出が1割減少するとGDPが0・3%押し下げられる。仮に中国の対露輸出が小幅減少にとどまったとし…

残り915文字(全文2215文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事