《危ない円安》中東 食・モノ・カネ不足が招く「社会崩壊」の危機=福富満久
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中東 食・モノ・カネ不足が招く 「社会崩壊」の危機=福富満久
世界の主要な小麦生産国のウクライナに対するロシアの全面戦争によって、小麦を必要とする中東・北アフリカ諸国が極めて厳しい状況に立たされている。
ロシアは世界一の小麦輸出国であり、ウクライナもトップ5に入る。世界の全穀物輸出における両国の供給シェアは大麦が19%、小麦14%、トウモロコシ4%と、3分の1超を占める。国連食糧農業機関(FAO)はロシアのウクライナ侵攻を受けて世界の食料・飼料価格が最大約20%上昇する可能性があると警告している。
世界保健機関(WHO)によれば、全世界の5歳以下の子供約1億5000万人が栄養失調だが、後発開発途上国の多くを含む50カ国が小麦供給の多くをロシアとウクライナに依存しており、ソマリア、エチオピア、ケニアなど栄養不足に陥る人々の数は、2022年から23年にかけて激増する可能性があると警告している。そして、なかでも深刻な影響が取り沙汰されているのが、中東諸国だ。
1900万人が食べられず
トルコは消費する小麦の約半分を国内で生産しているが、近年輸入にますます依存するようになり、その85%はロシアとウクライナからのものだ。
トルコの通貨リラ安による物価高騰を真正面から受け、パンのみならず電気代や燃料費も高くなり、一般市民の生活を直撃している。ここ数カ月、イスタンブールのさまざまな地区で、補助金付きのパンを購入するための人々の長蛇の列が現れ、政府への不満が急激に高まっている。
エジプトも小麦の輸入の85%をロシアとウクライナに依存しており、世界最大の小麦輸入国である。チュニジアは小麦の輸入の50~60%をウクライナに依存している。チュニジアの食生活の重要な部分を構成するパスタやクスクス(粒状のパスタ・蒸して肉と野菜を煮込んだソースを上からかけて食べる)などの小麦製品が広範囲にわたって不足し始めている。
14年以来戦争で荒廃しているイエメンは、ほぼすべての小麦を輸入しており、その3分の1以上がロシアとウクライナからだ。
国連世界食糧計画(WFP)と国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)などによれば、イエメンの飢餓危機は、すでに大惨事の様相を呈しており、22年6月から12月の間にさらに悪化すると予測している。最低限の食料を口にすることができない人々の数は、記録的な1900万人に達する可能性があり、50万人以上の子供と約130万人の妊娠中、または授乳中の母親が深刻な栄養失調に陥るとみられる。
波及する負のスパイラル
中東はどの国も、新型コロナウイルスによる世界的パンデミック(大流行)の余波を受け、輸入に頼る経済構造に起因するインフレと高い失業率から抜け出せず、政府は多額の公的債務を抱えている。困難に直面するのは末端にいる人々だ。
こうした人々の生活を支えてきたのが、いわゆる「レント」といわれる「外生収入」だ。外生収入には、(1)石油・天然ガス収入、(2)スエズ運河通行料やパイプライン通行料、(3)出稼ぎ労働者送金、(4)観光収入、(5)グラント(援助収入)などがある。
湾岸産油…
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週刊エコノミスト
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