《ウクライナ戦争で知る歴史・経済・文学》データで見るロシアと世界経済=榎本裕洋
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ロシア産の威力 1次産品で高い世界シェア 制裁の抜け道は「新興国」=榎本裕洋
ロシアによるウクライナ侵攻から約2カ月が経過した。日米欧が中心となって発動した対ロシア経済制裁が効果を発揮し、一日も早く停戦が実現することを筆者は望んでいる。しかし、世界全体ではいまだにロシアとの関係を断ち切れない新興国の方が多数派である点には留意したい。
ロシアと各国の距離を測るための方法はいろいろあるが、筆者は3月5日付でロシア政府が公表したいわゆる「非友好国・地域リスト(以下「リスト」)」に着目する。
リストに掲載された48カ国・地域を簡単に整理すると、欧州から39カ国、日本を含むAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の全21カ国・地域から8カ国・地域、そしてミクロネシア(米国との関係が深く2月25日付でロシアとの国交を断絶)で、ほぼ全てが先進国だ。
日本を含むG7(主要7カ国)は全てこのリストに含まれている。それゆえにG7の結束の強さは明白だ。それは14年のロシアによるクリミア半島実効支配時に、当時のG8から迅速にロシアを排除したことでも証明済みだ。
しかしロシアも含むG20となると様子が違ってくる。G20のうちリストに掲載されているのは9カ国と欧州連合(EU)、合わせるとG20のちょうど半分になる。
APECの大半は中立
これらの国々はG20からのロシア排除を訴えているものの、今年の議長国インドネシアは現時点では「G20議長国は全ての構成国を招待しなければならず、最初から不変のルールだ」とするなど中立的姿勢を崩していない。インドネシアのジョコ大統領は、「制裁は最善の解決策にならず、市民が犠牲になる」(今年3月10日付の日経電子版のインタビュー記事)と述べている。
その他、ロシアが加盟する国際枠組みではAPECも興味深い。APEC加盟21カ国・地域のうち、リストに名を連ねるのは先に述べた8カ国・地域のみであり、APECの中では少数派となる。今年APEC議長を務めるタイは難しいかじ取りを迫られよう。
G20とAPEC、共通するのは先進国と新興国のロシアに対する見解の違いである。
経済に目を移そう。対ロシア経済制裁の対象はカネ・モノ・技術・ヒトに分類される。これらのロシアへの流れを止めることで、ロシア経済の成長を止めることがその要諦だ。このうちカネについては、そもそも国際金融市場に占めるロシアのシェアが残高ベースで1%以下と小さいうえに、国際金融市場の主要参加者が結束力の強い先進国居住者であるため、経済制裁が効率よく機能している。ロシア中央銀行やロシア主要銀行に対する経済制裁がそれだ。…
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週刊エコノミスト
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