資源・エネルギー

洋上風力の入札制度を急きょ見直し 迷走する“公平な評価”

 <洋上風力のつまずき>

 三菱商事が秋田と千葉の3海域を破格値で同時落札し、業界が騒然となった日本初の洋上風力発電の事業権をめぐる入札は、6月10日に締め切られる予定だった第2回(秋田県八峰町・能代市沖の出力36万キロワット)の入札が、今夏以降に延期され、評価制度が見直されることになった。

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 経済産業省と国土交通省は3月16日、すでに公募が始まっていた入札の制度を改正する理由として「ウクライナ情勢を踏まえ、脱炭素の再生可能エネルギー開発が急務になったため」(省エネルギー・新エネルギー部)と説明したが、風力発電協会や、応札した企業から上がっていた「入札評価の基準が不明確」「三菱商事より早期に稼働させる計画が評価されず価格だけで決まった」といった批判に応える形となった。

 3月22日には、今回の入札を総括する有識者の審議会が開かれ、「選定プロセスの透明性向上」や「運転開始時期を今後の入札ではより高く評価する」などの方向性が示されたが、応札企業や再エネの法律に詳しい弁護士らからは「洋上風力を専門的に評価する第三者委員会の委員の名前を公表すべきだ」などの意見が相次いだ。

「配点が偏っている」

 3海域の入札は240点満点で評価され、価格面が120点満点、事業の実施能力(配点80点)や地域との調整や経済波及効果(同40点)の定性評価が120点満点だったが、実際には価格面の評価が120点満点だった三菱商事が3件をすべて落札した。

 なぜこうなったのか。実は定性評価は、満点が120点となっているのに、実際の最高点は98点で、満点を獲得した事業者はいなかった。つまり、「価格だけをことさら評価する入札だった」(応札企業)と批判されているのだ。

 3月22日に公開された「公募結果の総括」では、事業の実施能力のうち事業実績(配点30点)が特に問題視された。事業実績は、トップ(高位)、ミドル(中位)、ボトム(低位)の3段階評価となっていたが、応札した12社中11社がミドルという評価を受けた。

「欧州で1、2位の洋上風力の実績を誇るオーステッド(デンマーク)や独RWEと、日本国内で洋上風力の実績がない三菱商事を同じ評価とすることには強い違和感を感じた」(応札企業や弁護士)。こうした意見に対し、エネ庁の新エネルギー課は「事業実績に限らず、他の評価項目を含めて、審議会を経てパブリックコメントを得た上で公表している評価基準に基づいている」と説明する。

 しかし、審議会で「価格と定性評価を1対1(どちらも120点満点)として、それぞれ最低1社には満点を与えるべきだ」といった声が出た。これを受けて、両省は「差異が鮮明に点差として表れる評価」を今後の方向性案として示した。

 また、「三菱商事より3年早い稼働の計画が高く評価されなかった」という問題については、「事業計画の実現…

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