《ウクライナ戦争で知る歴史・経済・文学》ウクライナ戦争を読み解く クリミア併合・NATOの基礎知識=編集部
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超入門2 クリミア併合の衝撃とNATOの正体=編集部
ウクライナ戦争を読み解く上で、ロシアによるクリミア併合とNATOの役割を知ることは欠かせない。
Q クリミア併合はなぜ起きた?
ロシアとウクライナの戦争が続く中、クリミア半島併合(2014年3月18日)は8年を迎えた。クリミア併合に際しては、ロシアがウクライナ南部クリミアに覆面姿の部隊を送り込み、ロシア軍の影響下で「住民投票」を実施して、編入を正当化した。これにウクライナや国連、西側諸国が強く抗議・反発。日本も当時の岸田文雄外相が「ウクライナの主権、領土の一体性を侵害するもので遺憾だ」と批判したが、現実にはロシアによる実効支配が続いている。クリミア半島を巡る攻防はどうして起こったか。
地政学的にみると、プーチン露大統領が「ロシアの脅威」と捉えている北大西洋条約機構(NATO)勢力との境界に位置するウクライナは、ロシアの国防上、非常に重要な地域である。特に軍港のあるクリミアは、ロシアが何としても手に入れたかった。ロシアは黒海に面したクリミアに自由に使える港を持つことで、大西洋へとつながる黒海ルートを防衛することができる。「クリミア半島を握るものは黒海を握る」ともいわれるほどだ。
クリミアが「不凍港」であることも、海岸線のほとんどが北極海はじめ、極北の海に面するロシアには、大きな魅力だった。クリミアは古くは一級のリゾート地として知られていた。第二次世界大戦の末期、英米ソの首脳が戦後処理について協議した「ヤルタ会談」が開かれたヤルタは、クリミア半島にある都市で、皇帝や貴族の別荘地としても人気だった。
ロシアには、クリミア半島がかつてロシア領だったことから、「ロシアのものだ」という意識があった。また、1850年代にクリミア半島などを舞台にして英国やフランスなどと戦ったクリミア戦争の記憶がある。ロシアの敗北で終わったが、ロシア人に…
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週刊エコノミスト
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