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《防衛産業&安全保障》 どれだけ知ってる? 世界に君臨する米防衛企業主要5社を大解剖=岩田太郎

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世界に君臨 米防衛企業大手5社=岩田太郎

 戦闘機やミサイル、潜水艦から通信システムまで、米国の防衛企業はさまざまな製品を開発している。大手5社をピックアップした(企業名の後のカッコ内はティッカーコード)。

世界トップの規模誇る ロッキード・マーチン(LMT)

 軍事産業では世界第1位の規模を誇り、航空機、ロケット、人工衛星、ミサイル、船舶などの開発製造を手掛ける老舗企業。前身のロッキード・コーポレーションは1912年の創業で、95年に航空機メーカー、マーチン・マリエッタと合併して現在の形に。第5世代ステルス戦闘機F22やF35の製造元であり、有力製品のジャベリン対戦車ミサイルはウクライナ戦線において、ロシア軍戦車や装甲車の撃破に大活躍した。

 2021年12月期の売上総額670億ドルの71%を米国防総省から受注したほか、28%を世界各国への兵器輸出で売り上げる多国籍企業。過去5年ほどで外国軍向け契約が増えている。売り上げの27%を占めるF35は主力事業であり、この先数年にわたる受注を確保。年間150機前後を米軍や他国軍に納める安定した収益源だ。

 そのほか、92年に米ゼネラル・ダイナミクスから買収した戦闘機部門で、いまだ現役の第4世代F16戦闘機をはじめ、広域防空パトリオット地対空ミサイル、米原子力潜水艦搭載の核弾頭付きトライデント弾道ミサイル、防空戦闘艦に使われるイージス武器システムも手掛ける。同社のミサイル防衛システム需要はウクライナ情勢を受けて高まっているが、インフレでF35などの製造費用が高騰し、利益率が落ちているのが懸念材料だ。

誘導ミサイルに強み レイセオン・テクノロジーズ(RTX)

 1922年創業の軍事大手レイセオンと、航空宇宙のユナイテッド・テクノロジーズが2020年に統合して発足。軍事産業では世界第2位。誘導ミサイルを48年に開発、現在はパトリオットやトマホークなどを販売する世界トップの誘導ミサイル企業となった。21年12月期の売上高は644億ドルと、ロッキード・マーチンと同規模だ。

 売り上げのうち、軍事が65%、民間向けが35%で、地域別では米国が62%、欧州が15%、アジア太平洋が12%、中東と北アフリカが7%など。レーダー、電子戦システム、統合空中システム、指揮統制システムなどのシステム開発に強みを持つ一方、ドローン(無人航空機)やサイバーセキュリティーも手掛ける。米国が中国やロシアに後れを取る極超音速(音速の5倍超)巡航ミサイルの開発を、競合のノースロップ・グラマンと共同で進めている。

 民間向け航空機エンジンで有名な傘下のプラット・アンド・ホイットニーは、F35に搭載される軍用機エンジンも製造している。経営統合によるコスト削減などで、それに続く4年間に200億ドル相当の株主還元を行うことを目標にしている。世界的な物流の混乱による半導体不足など原材料の確保がリスク要因だ。

B21爆撃機を開発中 ノースロップ・グラマン(NOC)

 軍事大手のノースロップ(1939年創業)が94年にグラマン(29年創業)を買収して誕生した企業。軍事産業では世界第4位。前身のグラマンは第二次世界大戦時の優秀な海軍機製造で知られた。主に戦闘機、軍用輸送機、航空母艦、潜水艦、レーダー、人工衛星などを手掛ける。高性能レーダー、戦闘指揮管制システムや電子戦技術に定評がある。

 2021年12月期の売上高は357億ドル。米国内向け売り上げが86%を占める。配当や自社株買いで47億ドルを株主に還元した。戦闘機ではF35の胴体中央部の製造を行うほか、無人偵察機グローバルホークやその洋上派生型のトライトンも開発した。現役の長距離打撃爆撃機のB1およびB2の置き換えで、全翼機と呼ばれる特徴的な形を持つ新鋭のB21の開発を進めており、順調であれば全100機を製造予定。

 レイセオン・テクノロジーズと極超音速巡航ミサイルを共同開発中のほか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、およびそれらの管制システムも手掛けている。20年12月には既存のICBMをアップデートする次世代の地上配備戦略抑止力(GBSD)の開発を請け負った。22年12月期の業績予想は横ばいだが、世界的な軍需の伸びを受けて23年12月期は好調が予測される。

潜水艦から戦車まで ゼネラル・ダイナミクス(GD)

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