経済・企業

《防衛産業&安全保障》 経済安保で鉄、石油に次ぐ「第3の戦略物資」となった半導体のパワー=南川明

    ステルス戦闘機「F35」。高性能の半導体が大量に搭載されている(2017年10月、韓国ソンナム市) Bloomberg
    ステルス戦闘機「F35」。高性能の半導体が大量に搭載されている(2017年10月、韓国ソンナム市) Bloomberg

    半導体 安保に直結の「第3の戦略物資」 レーダー、ドローンで大量に=南川明

     ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、米国、欧州、日本が半導体などハイテク製品の対ロシア輸出を禁止する制裁措置に踏み切った。それ以前は、米国、中国、イスラエルの企業などがロシア向けに、軍事目的にも利用される半導体などハイテク物資を輸出していた。

     米欧日からのハイテク製品・部品の供給が止められたロシアは、この分野で中国に依存せざるを得ない。中国は対ロシア制裁に同調しておらず、スマートフォンなどの輸出を継続しているようだ。今後も中国からロシアへのハイテク物資の供給が続くことになれば、制裁の実効性が損なわれる。

     そうした状況を回避する目的で、米国はさらなる戦略的な取り組みを進めることが想定される。具体的には、21世紀版の「COCOM(ココム=対共産圏輸出調整委員会)」を新たに立ち上げるか、その後身である「ワッセナー協約」をより強化する組織を作ることになると筆者は予測する。

     ココムとはハイテク物資の輸出規制を行う目的で1950年に始動した。東芝機械(現芝浦機械)がココム規制に違反して旧ソ連に工作機械を輸出したことが87年に発覚。日米間で政治問題に発展したことを記憶している人もいるだろう。東西冷戦終結とともにココムは役割を終え、94年に解散した。

    自給率が低い中国

     ココムの機能は後身のワッセナー協約に引き継がれて現在に至っている。主に地域紛争やテロ防止などに対応するために、通常兵器と関連の軍民両用の汎用(はんよう)品の輸出規制を行う目的で96年7月、ワッセナー協約がロシアを含む33カ国で発足した。現在の加盟国は日米欧を中心に42カ国に上るが、中国は未加盟だ。半導体、コンピューター、センサー、工作機械などが規制の対象になっている。

     中国は2025年時点で半導体自給率70%を掲げるが、20年時点で10%台にとどまる。製造装置や部材、EDA(電子半導体設計ツール)など、自給率引き上げに必要なエコシステム(経済的な生態系)の確立に至っていないことが停滞の要因だ。このタイミングで米欧日が主導してココムの復活もしくはワッセナー協約の規制強化に踏み切れば、中国を経由した対露制裁の有名無実化を阻止することができよう。

     バイデン米政権は21年6月に、「基幹産業のサプライチェーン確保に向けた報告書」を発表。「半導体は国家安全保障に不可欠」と位置付けた。ステルス戦闘機「F35」のような複雑な兵器システムや通信・航法システムを含むほぼ全ての軍事領域において半導体が基盤であると指摘している。

     半導体のサプライチェーンが経済安全保障の観点から注目されているのは、国家のパワーに直結する問題だからである。第一次世界大戦では鉄、第二次世界大戦では石油が戦争の帰趨(きすう)を決める戦略物資だった。現在の武器には先端半導体が大…

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