コロナ禍とウクライナ侵攻で株価急騰 米の種子会社コルテバ
有料記事
Corteva ゲノム編集で穀物品種を改良=宮川淳子/31
コルテバ・アグリサイエンスは種子と作物保護剤を生産販売する米国企業。農業にテクノロジーを活用するアグリサイエンスを専門としている。種苗業界での売上高規模は世界2位(2017年)である。高度な技術によるトウモロコシや大豆などの種子、作物の健康管理のための除草剤や殺虫剤などを開発し、北米・中南米・欧州を中心に販売している。15年にはゲノム(全遺伝子情報)編集技術を使った収量率の高いトウモロコシ「ワキシーコーン」を業界に先駆けて栽培開始したことでも知られている。ワキシーはトウモロコシの粒がワックスを塗ったかのようなツヤがあるということの表現だ。
穀物供給の不足懸念
世界的な人口増加と食料不安に対応するために農産物の生産性を引き上げる必要が高まっている。新興国の人口増加や食生活の変化からも食料需要の増加が続く一方で、気候変動や飢饉(ききん)による問題は深刻化している。国連や欧州連合 (EU)を主体とする「食料危機対策グローバルネットワーク」の報告書によると、16年以降の急性食料不安(十分な食料を摂取できないことで、その人の生命や生活が差し迫った危険にさらされること)は、これまではアフリカ大陸などで政治的紛争によるものが多かった。しかし、20年は新型コロナウイルスや異常気象の影響で世界全体で急増し、約1億5000万人に達した。
こうした状況に加えて、今年に入ってからはロシア・ウクライナ戦争を契機に、両国が主要産地である小麦やトウモロコシなど穀物価格が急騰している。世界3大穀物(小麦、米、トウモロコシ)のうちシカゴ商品取引所で取引されている小麦とトウモロコシの先物市場には投資マネーが流入している。ロシアは20年の小麦の輸出量で世界トップシェアの19%(国連食糧農業機関調査)。ウクライナもトウモロコシの同シェアが15%、小麦は9%を占める農業大国だ。近い将来に穀物の供給量が不足し、価格が一段と上昇することへの懸念は強まっている。そのため、農業生産者をエンドユーザーにもつコルテバの株価も4月に一時、上場来最高値を更新した。
コルテバは、トウモロコシと大豆を中心に、高い収穫量、高品質、害虫抵抗性などの生殖質(生殖細胞に含まれ次世代に受け継がれる要素)や形質(性質や特徴)を持つ種子を開発している。種子事業は、21年の全社売上高156億ドル(約2兆円)の54%を占める。特に、米国はトウモロコシの世界最大の生産国で、コルテバの種子売上高の約3分の2をトウモロコシが占める。21年は、北米の種子売上高が4%増になったことに加え、ブラ…
残り1123文字(全文2223文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める