《超円安サバイバル》円安の引き金は日銀の「長短金利操作」…米財務省の指摘の鋭さ=愛宕伸康
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米為替報告書を読む 日銀の「長短金利操作」の結果 20年間で25%以上も円安に=愛宕伸康
円の実質実効為替レートが低下している原因を米財務省が指摘していた。
現在、円の実質実効為替レートは1972年の水準まで円安になっている。しかし、近年の動きを見ると、ドル・円相場など為替レートそのものが円安に振れてそうなったわけではない。
米財務省が2018年4月に発表した「為替報告書」が当時話題になった。日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を背景に、円の実質実効為替レートが過去20年の平均に比べ25%低下していると、かなり踏み込んだ指摘をしたのである。
為替報告書とは、為替レートの操作によって不当な利益を得ている国がないか調査し、半期に1度、米議会に提出する資料である。日本は監視対象国に指定されている。
22年4月の為替報告書はまだ発表されていない。この原稿を執筆している時点ではどんな指摘がなされるのか知る由もないが、事実としていえることは、直近の「実質実効為替レート」は、「過去20年の平均より25%以上円安になっている」こと、そして当時よりも鮮明に「日銀の長短金利操作が円安の起因になっている」ということだ(図1)。
そもそも実質実効為替レートとは、一国の対外競争力を測るために、主要な貿易相手国との為替レートを合成した上で(実効化)、相対的な物価変動まで考慮に入れて(実質化)作成した指標である。改めて図1を見ると、実質実効為替レートは特に20年以降ほぼ一本調子で低下している。しかし、実質化する前の名目実効為替レートはさほど低下しておらず、1ドル=110円台後半だった16年1月ごろの水準にとどまっている。
つまり、近年の実質実効為替レートの低下は海外との相対的な物価(相対比価)の変動、より具体的には海外の物価高に対して日本の物価が落ち着いていたことが主因であり、(少なくとも今年の2月までは)円相場が過度に円安になったからではないのである。
しかし、3月からは様相が一変した。米国では高インフレに対応するため、米連邦準備制度理事会(FRB)が3月に利上げを開始。5月には利上げ幅を拡大するとともに、6月からのバランスシート縮小を決定した。市場は3月に入ってすぐにFRBのタカ派姿勢を織り込みはじめ、長期金利が上昇ペースを加速。3月初に1・73%だった米10年金利は4月末に2・93%と、2カ月で実に1・2ポイントも上昇したのである。
一方、日本銀行は長短金利操作の下で無制限に国債を買い入れる「連続指し値オペ」を多用し、長期金利を0・25%に抑え込んでいる。結果、市…
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週刊エコノミスト
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