経済・企業 超円安サバイバル
《超円安サバイバル》「岸田政権の財政」に物申す! 「出口」見据えた議論を=佐藤主光
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やみくもな財政拡大は禍根を残す
「財源論」なき分配政策を見直せ=佐藤主光
政府は4月下旬、6.2兆円の国費を充てた新たな経済対策を打ち出した。ガソリン補助金を9月末まで延長、上限を現行1リットル当たり25円から35円に引き上げる。また生活困窮者支援として、低所得の子育て世帯に子ども1人当たり5万円、住民税非課税の世帯にも10万円を支給する。
財源として現在の「新型コロナウイルス対策予備費」などから1.5兆円を拠出、更に2022年度補正予算案を編成して2.7兆円を確保するという。世界経済はロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰という新たな不確実性に直面する中、量的・機動的な財政出動への圧力が高まっている。
とはいえ、やみくもな財政拡大は将来に禍根を残しかねない。従前、日本はデフレ・低金利が続いていたが、潮目が変わりつつある。日米の金利格差が拡大する中、円安が進行し、これが資源価格増と相まって輸入価格が上昇、経常収支が赤字化するとともに、国内の物価はインフレ基調に転じている。このままでは需要拡大によるデフレ脱却という日銀のもくろみに反したコストプッシュ型の「悪いインフレ」につながりかねない。
他方、金利を引き上げると負債を抱えた企業の業績悪化に加えて、政府の利払い費が急増するリスクがある。実際、財務省は金利が1%上昇すれば国債の元利払いに充てる国債費が25年度まで3.7兆円上振れすると試算する(表)。
加えて、岸田文雄首相は5月5日、英国での演説において、現在1兆円を超える家計の現預金を投資に転換するとした。現預金の多くが国債に充てられている現状を変えなければ「貯蓄から投資」へシフトさせる余地は乏しい。このように日本の財政・金融政策は大きなジレンマに直面している。
財源基盤の強化が急務
状況を打開するには財源基盤の強化が欠かせない。諸外国でも財政規模は拡大しているが、財源…
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週刊エコノミスト
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