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投資会社の弱みを露呈し、ソフトバンクグループが巨額赤字=後藤逸郎
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地政学リスクに翻弄 過去最大赤字のソフトバンクG 投資厳選する「守り」の方針へ=後藤逸郎
ソフトバンクグループ(SBG)は2022年3月期連結決算で最終損益が1兆7080億円の赤字に転落した。前年の日本企業最高益から自社の過去最大赤字とジェットコースターのような業績の変動は、投資会社であるSBGが世界の株式市況次第という現実を示した。孫正義会長兼社長の経営手腕の及ばない「地政学リスク」で乱高下する株式市場にSBGは命運を握られている。
5月13日の投資家向け説明会でSBGは「地政学リスク」を初めて公に認めた。米国の利上げやロシアのウクライナ侵攻が地政学リスクを「高める」とした。さらに、米中対立で「中国株は下落傾向にある」と明記。地政学リスクによる株式市況の悪化は深刻だ。前日の決算会見で孫氏が「投資を厳選」する方針を打ち出し、「我々の取るべき行動は『守り』だ」と強調するほど、SBGは瀬戸際にある。
事実、SBGが最重要経営指標とする「NAV(時価純資産)」は前年同期比31%減の18兆5000億円だった。前年に初上場し、SBGの過去最高益を支えたユニコーン企業の一つ韓国電子商取引大手クーパンはこの1年で株価が約半分以下に下落。20年に上場し、21年に115ドルの最高値を付けた米保険レモネード株は907億円の評価損を計上するなど、中核ファンドの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」だけで、3兆7388億円の損失を計上した。
株価が半減
そして、何より深刻なのは決算発表翌日の13日時点で、SBGの保有株の多くは前期末より株価が低く、損失が拡大していることだ。世界的なインフレで、各国の中央銀行は相次いで利上げし、さらなる株価下落リスクは残ったままだ。
それはSBGがさらなる苦境に陥るリスクを高める。「守り」を掲げる一方で孫氏は「攻め」の武器として、英半導体設計会社「アーム」の好…
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週刊エコノミスト
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