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動画界の盟主ネットフリックスに異変 次の王者はティックトックか?=志村一隆

一時の勢いに陰りが出てきたネットフリックス Bloomberg
一時の勢いに陰りが出てきたネットフリックス Bloomberg

 ネットフリックスの株価が年初から7割も下落したのは、動画市場に起きる地殻変動の前兆だ。

凋落ネットフリックスの「次」 スマホとZ世代が変える動画=志村一隆

 動画配信大手の米ネットフリックスが4月20日、2022年度第1四半期決算発表をした直後、同社の株価は前日終値の348.61ドルから226.19ドルまで35%下落した。創業以来、初めて加入者が減少したのがきっかけと見られている。同社の株価はいまだ下落を続けており、4月29日現在で190.36ドルと1月3日の年初来高値597.37ドルの約3分の1に減少してしまった。

 全世界190の国と地域でサービス展開し、2.21億人の会員がいるネットフリックス。21年9月に公開された韓国ドラマ「イカゲーム」が世界的にヒットしたのも束の間。この株価低迷は、コンテンツビジネスのリスクの高さを改めて気づかせてくれる。

ディズニーとHBO

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 本稿では07年にインターネット配信を開始して以来15年間、映画やテレビなどに分散されていた映像コンテンツの集金機能を集約し、一気に成長したネットフリックスになぜ陰りが見えてきたのか分析したい。

 まず、同社の経営指標を見てみると、売り上げ、営業利益とも毎四半期の数値は、前期比102~107%の範囲であり、成長が緩やかになったとはいえ、落ち込んではいない。会員数はどうか。22年3月末での会員数は2.21億人。エリア別の会員数割合は、北米34%、欧州・アフリカ33%、南米18%、アジア15%となっている。この3カ月間の会員数の減少は29.37万人。会員数2.21億人に対し、0.09%。北米が6.36万人。欧州・アフリカが30.3万人。南米が3.51万人。ただ、アジアは10.8万人増えている。

 グローバルで一律に会員が減っているわけではなく、減少数もごくわずかである。デロイトが発表した調査によると、加入者が毎月一定額の視聴料金を支払えば、配信されている全ての動画が見放題になる「SVOD」(月額課金〈サブスクリプション〉)サービスの解約率は米国で一般的に30%という。これに比べネットフリックスの解約率は小さい。

 経営指標からうかがえるのは、会員数が急激に上下しないエンタメ系月額課金型ビジネスそのものであり、株価低迷とは直結しないように見える。

 なぜ、市場はネットフリックスの将来性に見切りをつけているのだろう。第一の要因は、月額課金動画市場の競争が激化し、ネットフリックスの先行者利益が消失した点にある。そのポイントは次の2点だ。

(1)10年代からハリウッド大手スタジオの買収が続き、有力コンテンツが集約された。

(2)巨大化したメディアコングロマリットは、自ら配信プラットフォームを開始、コンテンツ囲い込み戦略を取り始めた。

 月額課金動画市場は、ネットフリックス以外に「ディズニープラス」や「フールー」を運営するディズニー、AT&T傘下のワーナー・メディアのHBO、アマゾンという4社の寡占市場である。

 ネットフリックスと直接競合する有力プレーヤーは、ディズニーとHBOの2社である。

 まず、ディズニープラスは、19年にサービス開始し、現在会員数は1億2980万人(22年1月)。前年同期比136%と急成長している。ディズニーがこの10年間買収してきた人気コンテンツは、ここでしか見られない。

 ディズニーは09年に「アベンジャーズ」など人気キャラクターを抱えるマーベルを43億ドルで買収したほか、15年に「スター・ウォーズ」を製作してきたルーカス・フィルムを40億ドル、19年には大手ハリウッドスタジオのフォックスを713億ドル(発表時524億ドル)でそれぞれ買収し、スポーツ専門局のESPNや地上波ネットワークのABC、フールーも傘下に抱える巨大メディア・コングロマリットとなった。ディズニー全体の売り…

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週刊エコノミスト

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