《地銀&メガ》新生銀も傘下のSBI「地銀連合」が今一つさえないわけ=高橋克英
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SBI「地銀連合」
今年5月には大光銀行も提携先に加わり、SBIホールディングスの「地銀連合」は計9行となった。
新生銀行と相乗効果狙うも、小さな規模とさえない業績=高橋克英
新生銀行がSBIホールディングス(HD)の連結子会社となって初の通期決算となった2022年3月期。連結純利益は有価証券での損失や貸し倒れ引当金増加などにより、前期比54.8%減の203億円にとどまった。ただ、決算と同時に発表した中期ビジョンでは、SBIグループとのシナジー効果などで、連結純利益を25年3月期に700億円と、22年3月期比約3.5倍に拡大させるという。
SBIは昨年12月に成立したTOB(株式公開買い付け)で、新生銀行の株式の約48%を握って連結子会社とした。今年5月には、新生銀行が来年1月に「SBI新生銀行」に社名を変更する予定と発表した。SBI傘下となった新生銀行の収益拡大のカギとなるのが、銀行業以外の「ノンバンクビジネス」だ。現状の新生銀行は、銀行という名のノンバンクといえる。
過去に買収した消費者金融の旧レイクを母体とする新生フィナンシャル、アプラスフィナンシャル、昭和リースの傘下3社による、無担保ローン、ショッピングクレジットなどにより、利益の大部分がもたらされている。実際、22年3月末には、新生銀行全体の売上高にあたる業務粗利益2175億円のうち、傘下3社によるノンバンク業務が占める割合は63%に達している。
収益拡大を急ぐのは、3年間で公的資金返済の道筋を示すためでもある。新生銀行には現在、公的資金3494億円が普通株式の形で入っているが、返済に必要な株価は7448円とされ、5月中旬時点で2000円を下回っている水準から比べればはるかに高い。株価をこれから3・5倍以上に引き上げるのは、SBIにとっても至難の業となる。
大光銀行も加わる
そのため、新生銀行を非上場化して、市場価格ではない「事業価値」を基にした株価算定により、公的資金を返済するという「新生銀の非上場化」も有力な選択肢とされている。とはいえ、現在の株価では返済できない公的資金を、非上場化した後に時価に関係なく返す手法には違和感がある。また、その場合でも、「事業価値」の核となる新たなビジネスモデルの確立と巨額の返済原資が必要であることに変わりはない。
その新たなビジネスモデルとなるのが、SBIが掲げる「地銀連合」構想だ。SBI・新生銀行からは、金融商品販売、ファンド組成、ノンバンク業務、デジタル化、共同店舗、地域再生など、資本やノウハウ、商品・サービス、ネットワークを提携地銀に提供し、SBI「地銀連合」全体で業績・株価向上、地域活性化、公的資金返済につなげようとするものだ。
SBIは、島根銀行、福島銀行、筑邦銀行、清水銀行、東和銀行、筑波銀行、じもとHD(きらやか銀行、仙台銀行)に出資したほか、今年5月…
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週刊エコノミスト
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