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週刊エコノミスト Online 株式市場が注目!海外企業

脱炭素で拡大 産業ガスの米エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ

Air Products and Chemicals 水素製造で世界最大級=永井知美/33

 米エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(エアー・プロダクツ)は、酸素、窒素、アルゴン、水素などの産業ガスを化学、石油精製、金属、電機、食品、医療など、さまざまな分野に提供する産業ガスの世界的企業である。産業ガスは、産業界で広く使われているガスの総称で、酸素は鉄鋼業(高炉内の燃焼温度上昇など)や医療現場、窒素は冷凍食品の冷媒や半導体の製造プロセス、アルゴンは溶接、炭酸ガスは炭酸飲料の発泡用などに使われている。

 エアー・プロダクツは50カ国超で事業を展開し、2021年10~12月期の売上高で産業ガス世界3位。空気分離装置、天然ガス液化装置など関連機器も手掛ける。燃焼時に二酸化炭素を出さない水素の製造で世界最大級であり、環境関連銘柄としても注目されている。地域別売上高構成比率は米・カナダ41%、欧州・中東・アフリカ26%、中国18%、中国を除くアジア11%、南米4%(21年9月期)。

 エアー・プロダクツは1940年、産業ガスを顧客の工場近辺で製造・販売することを目的に、米デトロイトに設立された。第二次大戦中の航空機用酸素製造で飛躍のきっかけをつかみ、戦後、鉄鋼業向け酸素など、商業用にシフトした。50年代以降、海外展開を進め、10年代には中国に巨大工場を建設した。16年に電子材料事業を分離して売上高を大きく落としたが、産業ガス専門企業としてコロナ下でも20%超の営業利益率を確保するなど、高い収益性を誇る。

世界3強で市場寡占化

 産業ガス企業は、大気から酸素・窒素・アルゴンなどを分離して製造し、パイプラインやタンクローリー、ボンベなどで顧客に届ける。典型的な装置産業で投資に多額の費用がかかり、顧客の工場のそばにガス工場を設けるなど顧客との結びつきが強い。世界的な販売網も構築済みであることから、新規参入が難しく寡占化が進展している。00年代以降、業界再編が進展して、現在、世界首位独リンデ、2位仏エア・リキードと3位エアー・プロダクツの3社で世界シェアの約7割を占めている。

 エアー・プロダクツの22年9月期上半期の連結決算は前年同期比22%増収、0.3%減益(営業利益ベース)。世界的に需要は旺盛で、近年成長分野と位置付けている水素も伸びているが、エネルギー価格上昇がマイナス要因となった。顧客への値上げ交渉を進めているが、急激なコスト上昇に追いついていない。

 ただ、中長期的には、産業ガス市場は堅調な伸びが期待されている。米調査会社のグランドビューリサーチによると、産業ガスの世界市場は20…

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