経済・企業

《EV・日本の大逆襲》車の「スマート化」で進むEV化=野辺継男

自動運転に不可欠な高容量電池=野辺継男

 自動運転など車の「スマート化」に伴い、バッテリーEV(BEV)化も加速する。

 人の脳のエネルギー効率は極めて高く、20ワット程度で動いているといわれている。その一部でもコンピューターで代替するには、数百ワット以上のエネルギーを必要とする。

 最近の車では、人が脳で行っている「運転」の一部をコンピューターが置き換えつつある。

「車」の構成は、極めておおまかにいえば、足回りとエンジン回りに分けられる(図)。そして、人が「車」に乗り、脳で周囲の安全や交通ルールなどにも対応し、おおむね手足でハンドル・アクセル・ブレーキを操作し、ようやく「車」は「走る」。しかし、現在事故の95%は人の認識・判断・操作ミスといわれており、最近では、コンピューターが人の認識・判断・操作を支援、あるいは置き換えつつある。

「回生ブレーキ」で差別化

 そして、EV(電気自動車)では、車にとって重要な、「止まる」機能から、人の関与が減ってきている。

 EVは、動力源であるエンジン回りを「バッテリー・インバーター・モーター」に置き換えて車を電動化する。そして、多くのEVでは「減速」から「止まる」まで、多くの場合、回生ブレーキを用いる。回生ブレーキとは、「走る」ためのモーターを発電機として利用し、「止まる」際のエネルギーを電力に変換し、バッテリーを再充電する方法(回生システム)だ。ブルームバーグの記事によると、独アウディのBEV(バッテリーで走る電気自動車)であるe−tronでは、緊急時の減速の約30%を含め、減速と停止の最大95%を回生システムで処理している。実際、e−tronのブレーキパッドはほとんど減らないともいう。この回生ブレーキを効率的に利用することでEVは走行距離を伸ばすことができ、特にBEVでは、その利用いかんが重要な差別化のカギになっている。

 最近、EVで採用が拡大しているワンペダル走行では、人はおおむねアクセルペダルのみを利用して加減速を行い、アクセルペダルから足を外すと停止に至るまで制御される。緊急時に追加の制動が必要でなければ、ブレーキパッドは使用されない。また、エンジン車で停止する際、人は最後の最後、ブレーキを踏む足の力を抜き、自分自身や同乗者が「カックン」となることを避ける。それと同じことを、EVでは加速度が突然ゼロになり余分な力が身体にかからないように、半導体とソフトウエアで電流を調整し停止する。そしてこれが「乗り心地」に大きく影響する。

 これが進化すると、現在の速度からどのくらいの距離で減速し停止するのか、その途中で走行上の障害物(周囲の車や道路を横断する歩行者などを含む)の存在や動きを感知して、とっさの対応も、回生エネルギーを効率的に利用して安全かつ快適に減速する。

 ナビに目的地を設定すれば、それまでの道路の起伏や渋滞状況、更には天候・…

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週刊エコノミスト

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