《ドル没落》ユーロが主要通貨の座を失いかねない数々の理由=土田陽介
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欧州の“多重苦”
米金融正常化に貿易赤字、インフレ、南北格差、地政学リスク…と欧州は通貨安の材料だらけだ。
「弱いユーロ」定着の恐れ 資源のロシア依存が泣き所=土田陽介
外国為替市場で年明け以降、ユーロ安が急速に進んでいる。年明け1月3日時点の終値では1ユーロ=1.1294ドルだったのが、6月3日時点の終値では1.0718ドルまで下落した。ユーロ安が進んだ最大の理由は、米国で金融引き締めが進んでいることにある。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレの加速を受けて、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利(フェデラルファンド〈FF〉レート)を0.25%引き上げ、5月のFOMCでも0.50%の追加利上げを実施した。
加えて、2月24日に生じたロシアのウクライナ侵攻がユーロ安を促している。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧米各国を中心とする国際社会はロシアに対して経済・金融制裁を矢継ぎ早に強化した。
その結果、ロシアではモノ不足が深刻化するなど経済が混乱しているが、ロシアとのつながりが深い欧州連合(EU)の経済は、ロシアの経済の混乱に伴う悪影響を強く受ける。このことが市場で警戒され、ユーロ安を促している。
さらに貿易収支が赤字に転じたことも実需面からのユーロ安圧力になっている。貿易収支(季節調整済み)は2021年10月から6カ月連続で赤字を計上、その幅も拡大している(図)。
実際に、最新3月のユーロ圏の貿易収支は176億ユーロの赤字と、1999年の統計開始以降で最大の赤字となった。貿易赤字の背景には、特に化石燃料の輸入額の急増がある。具体的に、22年1~3月期の「鉱物性燃料、潤滑油」の輸入額は1528.37億ユーロと前期から21.7%増加した。
もともとユーロ圏の貿易収支は、21年の年初をピークに黒字の縮小が進んでいた。その主な理由も、化石燃料、特に天然ガスの輸入額の増加に…
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週刊エコノミスト
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