経済・企業

《ドル没落》穀物、食肉、有事の通貨は食料になる=小菅努

食料は通貨より重要

 紙幣や貨幣はいつでも食料と交換できるわけではない。食料供給が途絶したとき、従来の通貨は交換価値を失う可能性がある。

戦争と異常気象が招く飢餓 生産地の偏在が供給リスクに=小菅努

 世界的なインフレが市民生活を直撃している。貧しい国や貧困層は食料にアクセスするのが難しくなる可能性が高まっている。国連世界食糧計画(WFP)は、2021年の「急性飢餓人口」が前年から約4000万人増加して過去最多の1億9300万人に達したことを報告しているが、22年に更に急増するのは避けられないだろう。戦争と異常気象が同時進行する中、食料危機や飢餓は差し迫った脅威になっている。食料へのアクセスにおいて、経済格差がより露骨に見える厳しい時代を迎えている。

 これは日本などのように食料自給率が低い国にとっても問題だ。いくら大金を持っていても、それ自体は食料ではない。有事の際に食料不足となれば、紙くず同然になったお金をいくら積んでも米や肉と交換できない「ハイパーインフレ」が発生する可能性もある。

 お金の交換価値が失われた時、価値を持つのは「現物」だ。原油や天然ガスなどエネルギーのほか穀物や肉が、交換価値のある通貨のように扱われるだろう。そして、貧しい国や人々、自給率が低い国のリスクは、食料が世界的に偏在していることである。

 食料の供給体制は一般に考えられているよりもはるかに脆弱(ぜいじゃく)だ。国際分業の下で食料生産地には著しい偏りが生じており、上位5カ国(欧州連合を含む)の生産シェアはトウモロコシ75%、小麦65%、大豆90%、牛肉69%、豚肉86%、鶏肉65%に達している。世界の人口増加、所得水準の向上、肉食化による食料需要の拡大に対応するため、食料の「商品」化で大量生産を行う体制が構築されている。

 しかし、限られた地域で集中的に生産を行っているため、供給障害が発生した際には大きな混乱が発生する。近年は深刻化する気候変動問題が食料供給の不安定化を招いていたが、2月にロシアがウクライナに侵攻すると地政学リスクも新たな混乱を引き起こした。食料供給体制が抱えていたリスクが一気に顕在化し始めている。

 小麦は未曽有の高騰になっている。20年中盤には1ブッシェル=5ドル台を割り込んでいたシカゴ先物価格は、今年年初には同7.7ドル台まで値上がりし、4月には過去最高値となる14ドル台まで急伸し…

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週刊エコノミスト

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