《まだまだ伸びる半導体》訪韓のバイデン大統領がサムスン工場へ直行した戦略的意図=服部毅
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半導体「連携」
半導体において米国との連携を強めた日本政府だが、今回のバイデン大統領の訪韓・訪日で韓国との差を見せつけられた。
「米韓」と「日米」に大きな差=服部毅
バイデン米大統領は5月23日、東京で岸田文雄首相と会談し、「両首脳は、日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)において採択された『半導体協力基本原則』に基づき、次世代半導体の開発を検討するための共同タスクフォースを設立することで一致した」(共同声明文)。
JUCIPは昨年11月、萩生田光一経済産業相がレモンド商務長官と東京で会談した際に日米両国の産業競争力強化のために設立することを決めた会議体である。そして、JUCIPで採択された「半導体協力基本原則」とは、今年の5月に渡米した萩生田経産相がレモンド長官と会談した際に2国間の半導体サプライチェーンの強靭(きょうじん)化で協力することで合意した内容を指す。
日米首脳共同声明で明らかになったことは、次世代半導体の日米共同開発に向けた作業部会の設立である。しかし、共同開発といっても米国ではすでにIBMが世界初となる2ナノメートル(ナノは10億分の1)デバイス開発に成功している。インテルも開発中で、同社のゲルシンガーCEOはIBMと最先端半導体研究開発で協業すると昨年発表している。
日本政府は半導体で米国との連携を強めようとしているが、その狙いは何か。
経産省は今年1月に明らかにした「半導体産業復活の基本戦略」で、第1段階として海外有力企業の工場誘致を位置付けている。昨年11月に決まったファウンドリー(製造受託企業)世界最大手の台湾TSMCの熊本工場建設がこれに当たる。ただし、ソニー向けのイメージセンサーが中心で製造が28ナノメートルの成熟プロセスであること、そこに約4000億円という巨額の補助金が投入されることを疑問視する声も上がっている。
インテルCEO極秘来日
これに続く第2段階として、日米連携の強化を掲げており、最先端プロセス開発のコンソーシアムに米IBMやインテルに参画してもらい、次世代半導体技術基盤の強化を図る。そして、第3段階は量子コンピューターなどの将来技術の研究開発にさらに幅広い国際連携で取り組むという。
今回の共同声明での半導体への言及は、第2段階の日米連携強化をにらんだものといえ、昨年末からその動きが垣間見られる。自民党半導体戦略推進議連の甘利明会長は、昨年末に東京で開催された半導体製造装置・材料の展示会の基調講演で「日本は米国企業と既に協議しており、その最先端半導体技術を引き込んで、日本の強みの製造装置・材料技術を生かして最先端(2ナノメートル未満)ファウンドリーを日本国内に設置しなければならない」と語った。
なお、インテルのゲルシンガーCEOは、今年4月にプライベートジェットでひそかに来日して経産省を訪問したが、この事実は公表されていない。経産省は、TSMCの次はインテルの工場誘致を考えているとみられ、その初期の打ち合わせと思われる。
しかし、日本の現状は欧州や中国にさえ大きく後れを取っている。半導体メーカーに40ナノメー…
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週刊エコノミスト
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