資源・エネルギー

電力使用制限令まで検討される日本の電力需給の厳しすぎる現実=小笠原潤一

7年ぶり節電要請

「純減」続く火力発電所 夏だけでなく冬も危機=小笠原潤一

 政府は6月7日、電力需給に関する検討会合を開催し、今年夏に電力の需給逼迫(ひっぱく)が見込まれるため全国を対象に節電要請を行うことを決定した。期間は7月1日〜9月30日で数値目標は設けない。節電要請は2015年以来7年ぶりとなる。

 ピーク時の電力需要に対する供給余力を示す「予備率」は3%が最低限とされるが、7月の予備率は中部・東京・東北電力管内で3・1%に落ち込む見通し。北陸、関西、中国、四国、九州電力管内でも3・8%と厳しい状況が予想されている。その背景には構造問題がある。

 11年の東日本大震災以降、原子力発電所の休止・廃止が続く中、石炭火力や天然ガス火力発電所の新設計画が浮上したが、再生可能エネルギーの導入が拡大。火力発電所の稼働率低下の懸念が生じ、電力会社の間で火力発電所の新設計画の見直しが相次いだ。

 また、16年4月の電力小売り全面自由化により、効率性の悪い高経年火力発電所の休止・廃止も増加し、設備能力の休止・廃止が新設を上回る「純減」が続いている。一方、ここ数年は猛暑時に想定を上回る需要規模となる地域も増えており、国民全体で一層の節電に取り組まないと電力需給が逼迫する可能性が高まってきた。

 さらには、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、天然ガスなどエネルギー調達競争が国際的に激化しており、火力発電が必要な時に発電できなくなるリスクも生じている。

電力使用制限令も

 供給対策として、東京電力パワーグリッドなどが120万キロワットの電源を公募し、休止中の火力発電の立ち上げを通じた確保などを進める。また、関西電力が美浜原発3号機(福井県美浜町)の運転開始時期を10月20日から8月12日に前倒しするなど、原子力…

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週刊エコノミスト

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