《まだまだ伸びる半導体》東芝+三菱電で始まるパワー半導体の世界戦略=豊崎禎久
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パワー半導体の競争力
造船や家電など、かつての日本が強みを持っていた産業は、企業同士が争って疲弊し、世界で敗れた。パワー半導体で二の舞いを演じてはならない。
世界と戦うために東芝と三菱電機は統合を=豊崎禎久
岸田文雄政権が推進している「デジタル田園都市国家構想」は、脱炭素化を推進するうえでパワー半導体がキーデバイスとなることから、日本のパワー半導体を強化することは経済安全保障上、ますます重要になってくる。そして、日本のパワー半導体が世界と戦っていくためには、企業の統合・再編が必要だと考える。
かつて日本企業が負け組になった領域の多くは、日本企業同士が争った領域だ。もともと参入企業が多い上に、同じ客を相手にしたため、結局、値段のたたき合いになった。そして各社は疲弊していったところで、海外企業との戦いに負けた。典型的な例は、造船、家電、液晶、最近では太陽電池も当てはまる。
半導体はグローバルマーケットのビジネスであり、グローバル企業と戦わなければならない。パワー半導体は日本企業が現在も世界で戦えている領域だが、企業数が多い。このままではたたき合いになってしまうため、まずは再編すべきだと考える。
材料でもたたき合いへ
統合・再編の鍵となるのは東芝だ。米KKRなど外資ファンドなどが買収に乗り出している東芝は、パワー半導体に関しては製造設備とエンジニアを最も多く抱えている。東芝の研究所にはエース級の人材をそろえたSiCの開発チームが温存されている。
もし、この東芝のパワー半導体の部隊を外資に押さえられてしまえば、日本の経済安全保障上、大きな損失となる。5月11日に参院本会議で経済安全保障推進法が可決・成立した折でもあり、政府系の産業革新投資機構(JIC)がまず東芝を買収する。そのうえで、三菱電機のパワー半導体部門と統合し、業界の再編を進めるべきだ。
また、パワー半導体の素材は、シリコンか…
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週刊エコノミスト
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