新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 総崩れ!世界経済

インフレの波はバイデン政権の土台も崩す=足立正彦

高進するインフレなどを背景に大統領支持率は低下の一途をたどっている Bloomberg
高進するインフレなどを背景に大統領支持率は低下の一途をたどっている Bloomberg

米中間選挙

 ガソリンや食料品価格の上昇──。インフレの高進は、秋に中間選挙を控えたバイデン政権に試練を突きつけている。

インフレ・支援疲れで国内回帰物価高で国民の不満はピークに=足立正彦

 米国でインフレの加速に歯止めがかからない。夏の旅行シーズンを迎えてガソリン需要が高まる中、6月11日、アメリカ自動車協会(AAA)は全米50州のレギュラーガソリンの平均価格が統計開始後初めて1ガロン=5ドルを突破したと発表し、1年前と比較して同1.93ドルも上昇した。

 エネルギーのみならず、食料品や家賃などの幅広い品目の価格が軒並み上昇しており、6月10日、米労働省発表の5月の消費者物価指数は前年同月比8.6%増と1981年12月以来40年5カ月ぶりの高水準となった。米国民は米経済の先行きを不安視し、バイデン政権の経済運営やインフレ対策が無策に映り、インフレの加速はバイデン大統領と与党・民主党にとり「アキレスけん」となっているのが現状だ(表1)。

 バイデン大統領は昨年8月末に米国にとり史上最長の戦争となったアフガニスタン戦争に終止符を打って、同国から完全撤退した。だが、混乱の中でイスラム主義組織タリバンの復権を許してしまったがために、大統領支持率は低下の一途をたどり、現在、40%台前半で低迷している。各種最新世論調査によると、7割以上の有権者がバイデン大統領の経済運営とインフレ対策に不満を持っており、支持率を押し下げている最大の要因となっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は年末にかけて利上げを続けてインフレ抑制を図る方針だが、今年11月の中間選挙を控える中、即効性のあるインフレ抑制策はないのが実情だ。

板挟みのエネルギー政策

 エネルギー政策では民主党左派勢力は環境重視の立場を取っており、米国内の原油・天然ガスなどの化石燃料の開発、増産に強く反対している。他方、共和党支持者はバイデン政権がアラブ湾岸諸国などに増産を求める一方で、国内の化石燃料の開発、増産を規制している同政権のエネルギー政策を批判しており、エネルギー価格が上昇し続ける中、バイデン大統領は板挟み状態にある。

 また、米国内では人工妊娠中絶や銃規制といった社会的争点を巡り世論はさらに分裂し、与野党対決は激しさを増している。民主党支持者と共和党支持者とでは各政策に対する支持、不支持が正反対の結果となっており、党派対決の先鋭化が浮き彫りとなっている。

 2006年以降の過去4回全ての中間選挙で与党は、上下両院、または、いずれかで少数党に転落しており、歴代政権は残り2年間主要法案を成立できない膠着(こうちゃく)状態に追い込まれてきた。ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領政権下で、イラク政策を争点にした06年の中間選挙では、与党・共和党は上下両院で多数党の立場を失った。10年の中間選挙では、オバマ政権の財政拡大路線に反発する保守系有権者の草の根運動「茶会党」の高揚で、与党・民主党は下院で改選後63議席の純減となる歴史的惨敗を経験。少数党に転落している。

 その後14年の中間選挙では、民主党は上院で多数党の立場も失い、オバマ…

残り1150文字(全文2450文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事