経済・企業

追悼 葛西敬之JR東海名誉会長

国鉄改革に奔走

リニアを推進した「国士」=清藤登喜和

 JR東海の「天皇」と称された名誉会長、葛西敬之氏が5月25日、間質性肺炎で死去した。81歳。1987年の国鉄分割・民営化で、JR東日本の松田昌士氏、JR西日本の井手正敬氏との活躍ぶりが名高い。

 しかし、葛西氏は「国鉄改革3人組」とされることを嫌った。国鉄時代は労働組合を相手に、三塚博運輸相(当時)らの運輸族に強力に食い込んだ。中曽根康弘首相(同)による「戦後政治の総決算」の中核を担った。「国鉄で汗をかいたのは私」との自負心を持って、JR東海をけん引した。

幻のJR西との合併

 こんな逸話が残っている。あるJR関係者によると、葛西氏がJR東海とJR西の合併を狙っていた――という。狙いは、JR東を超える、だ。

 JR西はローカル路線という弱点を持っていたが、その管内には有力政治家が多い。橋本龍太郎氏、加藤六月氏、安倍晋太郎氏、森喜朗氏……。永田町への影響力を考えた場合、メリットは大きかった。財務は東海道新幹線が支えればいい。両社のそれぞれの最大労組は同一の産業別組合(JR連合)に所属しており、労務的な問題もクリアできると踏んだ。

 この構想は日の目をみることはなかった。日本国有鉄道改革法(86年施行)は国鉄の業務について、グループの旅客6社と貨物1社に引き継がせると定めていた。乗り越えるべきハードルは高すぎた。JR西の井手氏も難色を示したとみられる。

 運命の出会いは2000年に訪れた。葛西氏は政財界の勉強会を立ち上げるため、東京大学時代の旧友・与謝野馨・元経済財政担当相に相談。与謝野氏が「若手の有望株」と紹介したのが、当時、官房副長官だった安倍晋三元首相だった。

 葛西氏が幹事役となり、「四季の会」(後のさくら会)が発足。東京電力の勝俣恒…

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週刊エコノミスト

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