銅は脱炭素で戦略的価値が高まった=片瀬裕文
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戦略物資
脱炭素に欠かせない銅は、国を挙げた争奪戦が見込まれる。
EVや再エネの普及に必須の「銅」 資源国の囲い込みで供給懸念=片瀬裕文
銅は、脱炭素社会の実現に向け、今後ますます需要が伸びる一方で供給が追いつかない可能性がある。脱炭素社会とは、経済社会の電化であり、銅はその電化を支える基幹物資だからだ。日本は、重要資源としての銅を確保する戦略を、国を挙げて考える必要がある。
例えば、電気自動車(EV)は内燃機関エンジン車の4倍、ハイブリッド車の2倍程度銅を必要とする。銅は電気や熱の伝導率が非常に高い。延性や展性も富み、丈夫で酸化しにくい合金も作りやすい。このため、太陽光や風力発電装置などの電源から送電線、EVなどの使用機器まで、脱炭素を担うあらゆる産業分野で欠かせない素材だ。
国際エネルギー機関(IEA)は、パリ協定の目標達成から逆算した場合の銅の需要を予測しており、リサイクルによる供給を計算に入れても、2030年時点で銅鉱山から年2510万トン銅が供給される必要があるとしている。一方で、稼働中または建設中の銅鉱山からの供給量は年1960万トンにとどまると試算している(図1)。
銅は鉱山から産出されるという性質上、簡単に生産量は増やせない。工業製品は設備投資をすれば増産できる。石油天然ガスは、探鉱して井戸を掘れば採掘できる。
これに比べ、鉱山は数百~1000メートル以上の地下から鉱石を運び出さなければならない。銅鉱石に含まれる銅は1~数%程度。つまり100キロの鉱石を地下から掘り出しても銅は1キロだ。コンゴでは含有量6%以上の鉱床もあるがそれでも6キロだ。この鉱石を細かく砕き、選鉱するためには、大量の電力と水が必要だ。
また、金属を取り出した後に残る大量の残渣(ざんさ)を環境を損なわないように処分しなければならない。しっかりした環境手続きと大がかりな工事が必要で、探鉱から生産できるまでには多くのプロジェクトが10年以上かかる。このまま需給ギャップが埋まらなければ、脱炭素の…
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週刊エコノミスト
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