中長期目標は「脱炭素」ながら短期の焦点は「サハリン2」=庄司太郎
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商社のガス事業
LNG1000万トンが失われる可能性もある。
三菱・三井の積極投資は続くが、サハリン2頓挫が高騰招く=庄司太郎
化石燃料価格が高騰する中、日本の天然ガス確保に重要な役割を果たしている総合商社は、天然ガスや原油への投資を加速すべきか、まだ態度を決めかねているようだ。
現在、総合商社の石油・天然ガス事業に対する立ち位置は、企業ごとに異なる。日本最大の液化天然ガス(LNG)事業者である三菱商事は、石油開発からほぼ撤退しており、天然ガス事業に集中している。三井物産は、石油とLNGの既存事業に注力しており、資源・エネルギーに強い商社としてのポジションを保ちながら、新規LNG事業にも積極的だ。
住友商事は石油開発事業から撤退しており、米国のコープポイント、インドネシアのタングーなどのLNG事業に集中している。伊藤忠商事は、アゼルバイジャン、サハリン1、イラクなどの石油開発を続けながら、オマーンとカタールでのLNG事業に携わっている。ただし、石油・ガス開発事業の地位は低い。丸紅は石油はサハリン1、メキシコ湾ほか、LNG事業をカタール、パプアニューギニア、赤道ギニアで行っているが、規模が小さい。
三菱商事と三井物産の天然ガス事業は、中長期的にも金属資源事業に次ぐ利益と資産を持つ事業であり、両社とも中長期経営戦略の中で、既存事業の強化と開発案件の着実な立ち上げを目指している。総合商社は脱炭素への構造転換を中長期の目標としているため、これまで業績を支えてきた資源事業は、いずれ脱炭素の波にのみ込まれると想定している。
今後の日本の天然ガス確保は大丈夫なのか。ロシアが欧州へのガスパイプライン供給を削減すると、欧州は天然ガス不足に陥る(図)。日本にとって最大の課題になっているのが、三菱商事と三井物産が資本参加しているサハリン2(天然ガス)の動向と米国フリーポート天然ガス液化基地の火災事故(6月8日発生)だ。
サハリン2のロシア側企業は、プーチン大統領と最も親密といわれるガスプロムであり、仮にロシアが西側による経済制裁の報復として、サハリン2からの天然ガス供給(日本向けはLNG年約6…
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週刊エコノミスト
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