経済・企業

利上げ本番はこれから 投資先は無難な先進国債=荒武秀至

グローバル投資戦略

 米景気の減速を予想し、下期は先進国の債券に投資妙味がありそうだ。

下期は日本の超長期国債に注目

来年利下げなら株価は反発か=荒武秀至

 2022年前半の投資環境は極めて厳しかった。インフレで商品市況は高騰したが、株式、REIT(リート)(不動産投資信託)、債券など主な金融商品は軒並み下落した(図1)。19~21年の3年間で倍に膨らんだ米国株式(MSCI米国株式、配当含む総収益)も今年は反落し、昨年の上昇分を今年前半で失った。

 マーケット環境が急激に悪化した要因は、インフレ抑制で後手に回ったFRB(米連邦準備制度理事会)が大幅な金融引き締めへと一気にかじを切ったからだ。19~21年の世界的株高は、19年からの米金融緩和にコロナ対策としての財政金融政策の総動員が加わったためだが、22年になるとコロナ禍が下火になり、その巻き戻しが起こっている。

景気後退は23年後半から

 だが冷静に考えると、米国の政策金利(FF金利)は1.5~1.75%(今年6月末)とFRBが想定する中立金利(景気を過熱も冷やしもしない金利水準)の2.5%を下回り、FRBの保有資産も過去最高の9兆ドル弱と超金融緩和の状態なので、依然として米国経済は底堅い。もっとも、昨年までのコロナ対策というカンフル剤が切れ、年初からの株安で消費者心理が冷え、さらに住宅ローン金利の5%超えで住宅投資に陰りがみえてきたのは事実だが、良好な雇用と所得環境が、経済の7割を占める個人消費を支えているため年内の景気後退はなさそうだ。

 米景気後退があるとすれば、今後の大幅利上げの影響が表れる23年後半から24年と考えられる。過去の経験則では「年間2%以上の利上げ幅になると1年半後に景気後退」という傾向がみられ、今回は年間3%超の利上げ幅となり24年に景気後退入りするのがメインシナリオだ(図2)。

 今回は金融引き締めに先んじて市場が崩れたこと、米S&P500株価指数の予想株価収益率(PER)が、6月中旬には15.9倍と過去30年間の平均16倍を下回り割高感が薄れたこと、米株の重しとなる米長期金利の上昇も8合目あたりに来たと推測されることなど、リスク資産の底入れシグナルも散見される。

 しかし、利上げの本格化はこれからであり、しかもその先に景気後退が待っているならば、投資スタンスも慎重にならざるを得ない。今年後半の投資戦略としては、株式やREITのようなハイリスク・ハイリターン型のものよりは、より安全な債券が良さそうだ。

 債券の中でも、米利上げにより資金逃避が起こりうる新興国債券や、金融引き締めで信用が厳格化される低格付け債は敬遠し、より安全な国債ないし投資適格社債が無難だろう。例えば、米国や豪州、カナダ、イタリアなど海外先進国の10年国債利回りは3%以上に一時高まり、金利水準に魅力が出てきたうえ、来年には金融引き締めが一巡し利回り低下(価格上昇)も期待できる。

 ただし、海外債券で注意すべきは為替リスクで、来年には米金利先高観が消失し、日本の貿易赤字も縮小へ向かうと円高への急反発も起こりうる。国債で3~5%程度の利回…

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週刊エコノミスト

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