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サハリン2からの外資排除でロシアに跳ね返るツケ=小林祐喜
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日本のLNG調達
ロシアがサハリン2の運営移管
資源供給国として失う信頼=小林祐喜
ロシアのプーチン大統領が6月30日、日本の大手商社が出資する極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益や資産を引き継ぐ新たな運営会社をロシアに設立する大統領令に署名した。運営は新会社に移管する。日本側が事業権益を失えば、エネルギー供給への影響は避けられない。ウクライナ侵攻を巡り、欧米とともに対露制裁を強める日本に、エネルギー安全保障上の揺さぶりをかけてきたとみられる。
しかし、影響を受けるのは日本だけではない。エネルギー安全保障とは、資源輸入国にとっては、適正な価格で安定してエネルギーを確保する政策の実現と定義される。一方、供給国においては、資源産出の持続性と、輸出先との安定した関係による国家収入の確保こそがエネルギー安全保障である。こうした定義に従えば、今回の大統領令の影響は日本のみならず、ロシアにおいても小さくない。
サハリン2は1994年に開発が始まり、ロシア国営ガスプロムが約50%、英シェルが約27.5%、日本からは三井物産と三菱商事がそれぞれ12.5%と10%を出資。シェルはウクライナ侵攻後に撤退の意向を示したが、日本の2社は権益を維持する方針だった。
大統領令は「外国企業が鉱区の開発に関する合意に違反し、ロシアの国益に脅威が生じた」と指摘し、「サハリン2の運営をロシア政府が設立する会社に移す」としている。旧来の出資者は新会社での株式取得を申請できるが、ロシア政府が審査して取得を認めない場合、株式は売却される。
大統領令の背景には日本に対する報復に加え、外国企業優遇に対するロシア国内の不満がある。サハリン2の開発が始まったのは、ソ連崩壊後、ロシア経済の混乱期と重なったため、…
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週刊エコノミスト
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