国際・政治

香港は「愛国者による統治」で国際金融センターでいられるか=倉田徹

香港返還25周年

本音は「1都市2制度」

止まらない市民の流出=倉田徹

 中国の習近平国家主席は7月1日、香港で行われた香港返還25周年式典に出席した。中国は2020年に香港国家安全維持法(国安法)を制定し、民主派への全面的な弾圧を開始。昨年は香港の各種選挙制度を改変し、民主派を完全に政界から排除して、40年近く続いた香港の民主化運動を事実上終わらせた。習近平氏は式典の講話で「愛国者による香港統治」を実現したと自賛した。

 こうした「中国式」統治を全面的に導入し、香港政治のあり方を根本から変えておきながら、他方で、習近平氏は「1国2制度」を変えないと繰り返し強調し、「1国2制度は世界がその成功を認める素晴らしい制度であり、変える必要はなく、長期にわたって堅持する」と述べている。習近平氏が変えたくないものは何か。それは、世界とつながる経済のパイプであろう。

 習近平氏は「香港が自由で開放的なビジネス環境、国際的なネットワークの開拓といった独特の地位と優位性を維持することを強く支持する」と語っている。つまり、習近平氏の理想とする「1国2制度」とは、香港内部で政治と経済を異なる「制度」の下に置き、政治は中国式、経済は国際的という「1都市2制度」の実現だろう。

市民流出は10万人

 そのためには、香港は世界から人材と資金を引きつけ続けなければならない。しかし、国安法施行後、香港の先行きを悲観する香港市民の流出はすでに10万人を超え、経済団体の香港総商会の今年3月の調査では38%の企業が市民の流出によってマイナスの影響が出ていると回答している。また、米政府が3月31日に発表した報告書によると、昨年は8万5000人いた香港在住の米国人は、7万人まで減少したとみられるという。

 外国人流出の主な原因は、国…

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週刊エコノミスト

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