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外食産業と一緒に発展した“職人”ロボット=横山渉
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回転ずし
IT化で最先端を走るくら寿司と、世界シェアトップの専用ロボットを製造する鈴茂器工の協業が作り上げる外食シーンは、等身大の「ハイテク・ニッポン」の姿そのものだ。
現場が鍛える日本流の進化=横山渉
新型コロナウイルスの感染拡大は、飲食業で重視されてきた接客のあり方にも大きな変化をもたらした。店内飲食からテークアウト(持ち帰り)ニーズへの流れはその一部だが、来店客と店員の接触を可能な限り減らす取り組みも本格化した。決め手となるのが機械化やDX(デジタルトランスフォーメーション)である。外食産業でその先頭を走るのが回転ずしチェーン大手のくら寿司だ。
同社の内側はハイテク企業そのものだ。接客対応では、ITシステムを積極的に導入し、来店予約から入店受け付け、席案内、注文から勘定の支払いまで店員と接することはない。機器にも触れることなく食事を楽しむことができるシステムを構築している。自動化された精算システムは98%の正確さで、機械やITシステムでは届かない領域に人手を介することで、勘定におけるミスはほとんど発生しないという。
来店から精算までの流れは図の通りだ。来店時間はスマートフォンの専用アプリで10分ごとの時間帯で予約ができる。入店時の無人機で受け付けをした後は、店内のデジタルサイネージ(電子表示装置)が客を座席に案内する。料理を注文する際は備え付けのタッチパネルだけでなく、客が自身のスマホから直接注文することもできる。コロナ禍の最悪期にはタッチパネルすら触れたくないという客もいたという。
各座席には、すしなどが流れて送られてくる通常のレーンの他に、注文用の専用レーンがある。同社の岡本浩之取締役は、「全店でレーンを二つに分けて設置しているのは当社だけ」と話す。レーンを分けることで品物を載せた皿の流れが効率化されるのだという。
90年代から自動化に着手
客と店員の非接触型サービス100%を確立したのは昨年12月だが、同社の店舗自動化の取り組みは早く、1997~98年ごろに始まった。回ってくるすし皿には樹脂製の透明なカバーがついており、カバーに付けたQRコードと店内設置のカメラがレーンにある商品が空気に触れている時間を計測して、客が食べたすしなどの個数などを管理している。
「来店客は着席して10~15分の間に食べるすしの数が一気に増えるが、その後は落ち着く」(岡本取締役)。客の滞在時間によって変化する消費皿数(食べる量)を予測し、その数を厨房に表示し、レーンに流す皿数を最適化している。それが食品廃棄ロスを軽減しており、システム導入以前は10%以上だった廃棄率が現在では3%になった。「機械でできることは機械に任せて、店員にはできるだけ顧客満足度向上のための作業をしてもらう」(岡本氏)という考えで店舗を運営しているのだという。
にぎりも機械で
回転ずし店が提供する商品は麺類からデザートまで多様化しているが、主役はやはりにぎりずし。くら寿司のにぎりの「シャリ玉」を作るロボットを製造・納入しているのは、東証スタンダード上場の機械メーカー、鈴茂器工である。くら寿司をはじめとし…
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週刊エコノミスト
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