経済・企業

エネルギーの脱ロシアが再エネ設備の中国依存に行き着く恐れ=山本隆三

 エネルギーの脱ロシアを進める欧州諸国だが、再生可能エネルギー設備では中国が高いシェアを持つ。

「脱炭素」は停滞しても……欧州で拡大する石炭火力=山本隆三

 欧州諸国は、高いインフレ率に見舞われている。高騰する電気・ガス料金がその大きな原因だ。ユーロ圏19カ国の5月の消費者物価上昇率は前年比で8.1%。電気・ガス料金は1年間で43.5%上がった。

 今年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、欧州連合(EU)はロシアに戦費を渡さないために、化石燃料引き取り量の削減を始めた。その効果もなく単価は上昇し、ウクライナ侵攻後4カ月半の期間にEUがロシアに支払った化石燃料代金は660億ユーロ(約9兆円)にもなる。EUはロシア産化石燃料への依存を一層低減する施策を今後実行するが、待ち受けるのは、脱炭素の停滞とさらなるエネルギー価格上昇だ。

 天然ガスは、住宅や発電、産業部門で使用されるが、容易に他の燃料に切り替えが可能なのは発電部門だ。石炭火力を利用すれば、天然ガス消費量の抑制につながる。英BPの統計によると、2021年のEUにおける1次エネルギー消費に占めるロシアのシェアは、天然ガス37%、石炭20%なので、石炭のロシア依存度は相対的に低く、脱ロシアは比較的容易だ。域内での石炭生産もあり、現にポーランドの今年の生産数量は対前年比で増加が続いている。

 石炭は二酸化炭素(CO2)排出量が多く、脱炭素の最初の削減目標にされた。EU各国をはじめ、20カ国以上が石炭火力の廃止目標年を決めている。すでに石炭火力を廃止した国もあるが、脱ロシアのためには石炭火力の利用が必要だ。20年に石炭火力を廃止したオーストリアは復活を決め、フランスやドイツなども石炭火力を利用して天然ガスの消費量を抑制することを決めた。利用される石炭火力設備はEU全体で1400万キロワットであり、フル稼働すれば年間3000万トン以上の石炭が…

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週刊エコノミスト

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