米中間選挙で逆風の民主党 手掛かりは“反トランプ・反共和”の世論=安井明彦
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上下両院で多数派の維持が危ぶまれる民主党にとっては、不人気なバイデン大統領の悪影響を遮断できるかが、中間選挙大敗を回避するカギとなる。
大敗回避できても「不人気大統領」の選挙後はイバラの道=安井明彦
11月8日に投開票が行われる米国の中間選挙では、下院の全ての議席(435議席)と上院の議席の3分の1(34議席)が改選となる。バイデン大統領を擁する民主党が、上下両院で多数派を維持できるかが焦点だ。
民主党が置かれた状況は厳しい。強い逆風になっているのが、バイデン氏の不人気だ。米国の中間選挙では、大統領の支持率が結果を左右する度合いが強まっている。党派対立の深まりに伴い、大統領を支持する有権者のほとんどが、議会選挙でも大統領が所属する政党の候補者に投票するようになってきたからだ(図1)。前回、2018年の中間選挙では、共和党のトランプ前大統領を支持する有権者の実に9割近くが、共和党の候補に投票している。
よく指摘されるように、米国の大統領が初めて迎える中間選挙では、所属政党が大きく議席を減らす傾向にある。選挙結果が支持率に左右される以上、こうした歴史の重荷から逃れることができるのは、高い支持率の大統領を擁する政党だけである。実際に、例外的に最初の中間選挙で議席を増やした共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領は、02年の最初の中間選挙の時点でも、前年の米同時多発テロの余波で60%を超える高支持率を誇っていた。
対照的に、今年の民主党は「不人気な大統領」の重荷を背負う。バイデン氏の支持率は、7月中旬時点で40%を割り込む。クリントン元大統領やオバマ元大統領など、民主党の近年の大統領の同じ時期と比べても、バイデン氏の支持率は低い。いずれも就任後最初の中間選挙で大敗した大統領であり、クリントン氏は上下両院、オバマ氏は下院で多数派を失っている。
不人気な大統領の重荷を踏まえると、今回の中間選挙で民主党が期待できる最善のシナリオは、敗北の度合いを最小限にとどめることだろう。
バイデン氏を「切り離し」
一方で数少ないとはいえ、民主党にとっての朗報もある。それは改選議席の組み合わせだ。特に上院は民主党の改選議席と比べると、改選となっている共和党の現有議席で、必ずしも現職の地盤が強くない選挙区が多い。
下院では、民主党の多数派としての弱さが防波堤になる。7月12日現在、218議席が過半数の下院で、民主党の現有議席は220に過ぎない。民主党の地盤が弱い選挙区は、すでに共和党の議席になっている場合が多いからだ。これに対して、クリントン氏やオバマ氏のもとで大敗した際の民主党は、改選前に250を超える議席を持っていた。現在の民主党と比べると、大統領の支持率低下に伴い、落選しやすい議員が多かった。
大敗回避に向けた民主党の切り札は、不人気なバイデン氏との“デカップリング(切り離し)”だ。たと…
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週刊エコノミスト
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