増える太陽光発電が火力を追い出し、電力供給不安が当分続く=瀧口信一郎
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電力逼迫を契機に蓄電インフラ導入へ=瀧口信一郎
資源エネルギー庁は今年3月21日、東京電力管内で電力需給が厳しくなるとして、初めて「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を発令した。節電や老朽火力発電所の稼働で事なきを得たが、その後も需給逼迫への懸念は収まらない。
現状の「電力需給逼迫」は、主に供給の問題に起因する。これには二つの側面がある。一つ目は発電の不足である。冷暖房需要が高まる夏や冬に十分電力を供給できないのである。需要に対する供給余力である予備率は最低3%が求められるが、今年の夏は東北、東京、中部管内では3.1%になると予想され、冬に至っては東京電力管内では予備率がマイナスになると懸念されている(表1)。
この主な原因は、2011年の東日本大震災後に爆発的に増えた太陽光発電であり、昨年12月時点の発電容量は日本の直近5年の最大電力1億6500万キロワットの39%に相当する6433万キロワットにのぼる。ただ、そのうち確実だとみなされる供給力(発電実績の下位5日の平均から算出)は最大でも20%程度しかない。天候によっては発電しないことがあるためである。
太陽光発電の導入量が増えると、火力発電を追い出すことにもなる。晴れの日に太陽光の発電量が増えれば、電力会社は稼働が落ちる老朽火力発電所を停止したり、廃止したりする必要が出る。老朽火力を廃止した場合、当然新設もしない。収益を生まない状態であれば、株主から賛同を得られないからである。
二つ目は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う天然ガス価格の高騰である。30年までに、太陽光発電と火力発電のコストは逆転が予想されていたが(表2)、現状の天然ガス市場価格を前提にすれば、すでに一部では逆転が起きている可能性もある。
蓄電池への集中投資を
この二つの問題は短期的には対処できるかもしれない。発電の供給自体は停止中の老朽火力の再稼働で対応できる。実際…
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週刊エコノミスト
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