経済・企業

米国株価は利下げ織り込み反転基調、日本は米国以上の上昇局面=平川昇二

投資家心理は総弱気だが……(ニューヨーク証券取引所) Bloomberg
投資家心理は総弱気だが……(ニューヨーク証券取引所) Bloomberg

 投資家心理は歴史的な総弱気だが、市場はFRBの利上げをすでに織り込んでいる可能性が高い。

米国株価はインフレ頂点で底打ちの過去=平川昇二

 米国の株式市場はさえない展開が続いている。収まらないインフレや米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げなどを背景に、投資家はスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)の懸念から逃れられない。株式、債券ともに下落しているため、主だった資金の逃避先もなく、投資家の心理は異常に悪化している。ただ、足元の環境を注意深く見てみれば、株価は今後、反転基調をたどる可能性は十分にあると考える。

 投資家心理は現在、歴史的な“総弱気”となっているようだ。米個人投資家協会が発表する個人投資家の株式市場についてのブルベア差(強気派の比率-弱気派の比率)は、今年7月時点でマイナス30ポイント超を記録しており、リーマン・ショック(2008年)時の水準すら下回っている。これほどの投資家心理の悪化を招いた要因はいくつかある。

 新型コロナウイルスの感染拡大はサプライチェーン(供給網)を断絶させ、また感染対策としての膨大な財政支出もインフレの要因となった。さらに、コロナ禍が完全に収束しないうちにロシアがウクライナに侵攻し、地政学リスクの顕在化に加えて資源価格高騰も引き起こした。中国のゼロコロナ政策によるロックダウン(都市封鎖)によってサプライチェーンに再び不具合が生じ、中国自体の景気も停滞した。

 年初からの株価下落の背景には、FRBに対する信認低下もあろう。インフレの先行きに対する判断ミスと、その後の急速な金融引き締めへの転換は、株価の調整を速めた可能性は否めない。また、景気の遅行指標である物価動向を金融政策の判断材料に使い、景気を犠牲にしてまでも物価を抑制するという政策スタンスは、今後も政策の判断が遅れるリスクが高いことを示していると考えられる。

景気後退でもEPS上昇

 しかし、調整が続いた米株式市場は、次の理由から今年度後半は反転基調に入ると予想している。

 第一はインフレ率がピークアウトする可能性が高いからだ。6月中旬から米景気後退懸念を背景に原油価格など主要商品市況が調整しており、エネルギーや食品価格が押し上げていた物価高が7月には弱まる公算が大きい。1955年以降の11回の米インフレ率の上昇局面をチェックすると、平均的にはインフレのピークで株価指数が底打ちしている。今回は6月でインフレがピークアウトし、株価が底打ちした可能性が高そうだ。

 第二は、金融市場がFRBの今後の利上げをほぼ織り込んでおり、今後は23年の利下げ局面を織り込み始める可能性が高いからだ。政策金利であるFF金利の先物市場が織り込んでいる今後の利上げ幅を見ると、商品市況の調整が始まった6月中旬を境に、今秋以降は利上げ幅が縮小に向かい、同時に23年には数回の利下げ実施を織り込んでいることが分…

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